ツインズ!22章_2

アーサー視点

神様のいる世界2


そんな風にルートとも打ち解けた頃、アーサーはギルのもう一人の家族に会う事になる。

アーサーが一番苦手な年上の男性…

アーサー達が朝食を食べ終わった頃に会う事になったのは、いかにも出来る男と言った感じのギルベルトとも、武骨な美丈夫と言った感じのルートとも違い、どこか優雅だが穏やかな雰囲気の紳士。

食事が大方終わって3人で談笑していると、ダイニングのドアをコンコンと軽くノック。

3人が視線を向けたところで、

「楽しそうだね。叔父さんもお邪魔して良いかな?」
と、優しい口調でそう言った。


もちろん異論などあるはずもなく、ギルが緊張するアーサーを紹介すると、彼はきょとんと眼を丸くしてギルに言った。

「…男の子…だよね?」
「おう、男だぜ?」
と、そのギルの返答にもう一度アーサーに視線。

その時点でアーサーは泣きたくなった。

昨日飛び出したまま少女の格好で当たり前にいたが、父親世代に受け入れられないのは昨夜でわかりきっていたことなのだから、ギルの服でも借りれば良かった…。

そう思えば居たたまれなくて、泣きそうになりながら震えていると、驚いた事にギルの叔父はふんわりと言ったのである。

「あ~そうだよねぇ…。ギラギラしたとこ感じないし?
男の子で良かったよ。これで女の子だったら、私が結婚しろ跡取りを作れとうるさい親族避けに欲しくなって、ギルと争わないといけないところだった」

へ???

アーサーがその言葉に驚いて目をぱちくりしていると、ギルに後ろからぎゅっと抱きしめられた。

「お姫さんは、いくら親父でも譲らないぜ?」
と、少し険のある警戒するようなギルの声。

そんな余裕のない風なギルとは対照的に、叔父の方は、ハッハッと、笑いながら

「女性だったら、だよ。
彼らは可愛くても男の子じゃ許してくれないだろうしね。
どうせ許されないで揉めるなら、可愛い甥っこの恋路を邪魔したりはしないさ。
でもまあ、良い子をみつけたね、ギル。
お前達がギラギラした、いま風に言うと“肉食系”?っていうのかな?
そんな女性を恋人として連れて来たら、私はマンションでも買ってこの年齢から1人暮らしをしないとならないところだった。
見た目は可愛くて中身も可愛い。
最高じゃないか」
と、言いつつ席についてルートに食事を出してくれるよううながした。


ギルいわく、昨今の女性のギラギラ感が苦手で、プライベートでは極力女性との接触を避けているというこの叔父にとっては、むしろアーサーが少女ではなく少年だったほうが喜ばしいとのことだった。

まあ紳士なので、もし甥っこ達がそういう女性の恋人を連れて来たとしても、本人が言った通り何かしらの理由をつけて自分の方が家を出て、さりげなく距離を取るつもりだったらしいが…。

そんなわけで大丈夫!と太鼓判は押されたものの、この格好はまずいのでは…と、それでも秘かにアーサーは思ったわけなのだが、叔父は目の前にギルと並んで座るアーサーににこやかな視線を送りながら

「う~ん。せっかく可愛い子が来てくれたわけだし、私も服を色々選びたいなぁ。
クラシカルなワンピースとか取り寄せて良いかなぁ?」

君の恋人に服をプレゼントしたら君は怒るかい?などと、ギルに聞く。

それに対してギルが、怒らねえけど…と言いつつ

「親父、女嫌いだったんじゃ?
服は良いのかよ?」

と聞くと、叔父はどキッパリ

「服は大好きだよ。
女性モノの方が可愛い服多いしね。
問題は…それを着る中の人間がギラついているのが嫌なんだ。
中身がギラギラしていなくて、可愛い服を着て自宅で目を楽しませてくれる、そんな相手になら着せたい服はいくらでもある。
綺麗なモノは大好きだ」
と断言した。

……変わっている。
自分も他人の事は言えないが、ギルの叔父さんは随分と変わった人だった。

すましてコーヒーをすする穏やかで優雅な外見に変わった嗜好の人物。
だが、彼がただの変なオジさんではないことを、アーサーはこのあと実感する事になる。

そう、アーサーの親との、アーサーの身の振り方についての交渉の場において…。



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