ルート視点
急募:姫君の扱い方2
…は?…今、兄はなんと言った??
「…兄さん…今“アーサー”……と言ったか?」
聞き違いかもしれない。
そう思って聞き返してみると、兄はきょとんとする。
「おう、言ったぜ?まさかの知り合いとかか?」
「いや…そうではなくて……」
直接的に聞いてしまっていいものだろうか…
しかし聞くしかないだろう。
「それは…一般的には“男性名”ではないのか?」
「そうだけど?あれ?男って親父に聞かなかったか?」
と、答えてくる。
聞いていた。
ああ確かに聞いていたとも。
でも兄の口から再度それを聞いてもなお、ルートの脳内は絶賛混乱中だ。
だって、可愛い。
こんなに愛らしい女性は見た事がないと断言できるレベルで可愛い。
「聞いていた…聞いていたのだが……」
と、ルートは頭を抱えた。
「そのつもりでいたのだが……」
「おう?」
「俺はここまで可憐な女性を見た事がない」
そう、未だに信じられない。
目の前の少女が女性じゃないなら、いったい自分の周りにいる女性と言うのは何なんだろうか……
そんな思いを込めて言うと、兄はケセセっと楽しげに笑う。
「だろ?なにしろ俺様が一目惚れしたくらいだ。
まあ、あれだな。
お姫さんに出会って、俺様は初めてエリザが言ってたアレを実感した」
「……『こんな可愛い子が女の子のはずがない』……というやつか」
「そうそう、それだ!ルッツも思うだろ?」
「うむ…」
納得がいかない。
いや…確かに別に実害があるわけではなく、見目麗しく癒される容姿なのは実に好ましい事ではあるのだが……
(…本当に兄や俺と同じ性別……なのか?)
その一点が実に納得がいかない。
こんなに愛らしい少年が現実にこの世に存在して良いものなのだろうか…
そして宗教画の天使じゃあるまいし…と、脳内で続けた瞬間、──ああ、そうか──と、ストンと納得した。
宗教画の天使達だって、霊体で人間とは違うので正確には性別はないのかもしれないが、一応体的には女性ではなく男性体なのにあれだけ愛らしい容姿をしているではないか。
あれと似たようなものと思えば良い。
そう、女性ではない。
一応体の機能的には自分と同じ男性体ではあるが、根本的に何かが違う存在なのだ。
兄が“お姫さん”と呼んでいるように、男でも女でもなく、きっと“お姫さん”という人種だと思うのが正解なのだ。
ルートは自分の中で目の前の“お姫さん”の性別についての壮絶な違和感をそう納得させたが、それから新たな問題に頭を悩ませる事になる。
それはつまり……“姫君の扱い方”を早急に学ばねばならない、と、その一点についてであった。
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