ギルベルト視点
お姫さんを手にする方法5
「明日一番でお姫さんは病院に連れて行くよ」
「…病院?」
いきなり飛ぶ話にギルベルトが目をぱちくりさせると、叔父は笑顔のまま頷いた。
他に打撲とかもあればそれも一緒に診断書だ。
今探偵の知人にお姫様の親の調査を依頼したから、どのあたりを突けば弱いのかもじきわかる。
そうして準備がある程度終わったら、お姫さんの家に電話をかけてアポイントを取った上で、私とお前とお姫様で、お姫様の自宅へGOだ。
お前はお姫様を可愛がっている年上の友人。
私はその保護者。
で、昨日、公園にいるお姫様を保護して我が家に泊めて、事情を聞いて心を痛めている。
自宅で関係がうまくいっていないなら、我が家は広いし親族とは言え親子ではない叔父と甥の3人暮らし。
1人くらい増えても問題ないし、お前も楽しいし、我が家でしばらく預かりたい。
そんなところかな。
それで渋るようなら、そこからは穏便な方向は諦める。
大事な年下の友人をお前も心配しているし、私も関わってしまったからには心配だし、虐待で負った怪我は診断書も取ってある。
それを公けにしてお姫様の保護を要請する準備は出来ているということで説得。
それまでに探偵の知人から親の弱いあたりの報告があれば、なんならそちらの方面に相談してそちらから言ってもらっても?と添えれば完璧か」
…親父…こんなキャラだったっけ?
普段穏やかな紳士そのものの叔父が目を爛々と輝かせて話すその内容に、ありがたいことではあるが、遠い目になるギルベルト。
それに対して叔父は画策なんて久々だけどね、などと言いながら
「資産家の家の跡取り息子なんかに生まれると、善良で大人しいだけの人間でいたら強欲な親族に身ぐるみはがされてしまうからね。
不本意ながら多少強引にでも我を通す術を身につけてしまうものだよ。
そして…私に何かあればそうやって行くのはお前だからね、ギル」
と、苦笑する。
叔父はおそらくこれを機会に、そういう生き方は出来ないであろうルートの分もギルベルトにその役割を担えと言う意味もあって言っているのだろう。
なるほど、理解した。
そう言う事ならギルベルトもその方針で生きていく事には抵抗はない。
結局このあと、一通りスケジュールについて話しあうと、
「お前のお姫様を怖がらせたりしないように、朝には私は善良で優しい叔父さんになっているから紹介してくれよ」
と、叔父は中央へと戻っていった。
…まあ…根回し的には成功と言って良いよな……
叔父が帰ったあと、ギルベルトはもう一度寝室へ戻ってお姫さんの眠るベッドの端へと腰をかけた。
そしてウィッグくらいなら大丈夫か…と、そっと外してみると、同じ色合いの短い髪。
それでもやっぱり髪の短い少女にしか見えない。
というか、ウィッグを被った時よりも若干幼く見える気がする。
…可愛い。
こんなあどけない様子のお姫さんに手をあげられるというのが信じられない。
親はどんな心境で手をあげたのだろう…。
…これからはさ、我が家の男全員で守ってやるからな?
ギルベルトはその短い髪を一房手に取って口づけると、心の中でそう言って、少し迷ったが結局棚から予備のブランケットを出すと、それを手にリビングに戻ってソファに横たわった。
同性だから別に一緒に寝りゃあいいじゃん…と流すには、あまりに可愛すぎて後ろめたい気分になってしまうお姫さんにため息をつきながら…
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