ギルベルト視点
お姫さんを手にする方法4
他人に物を頼むのに、頼むこと自体が不満だなどと言う顔をするのはもってのほかだ。
そう思うのに、完全には割り切れない自分は、紛れもなく子どもなのだとギルベルトは思う。
もちろん不満だなどと口にする事はないが、ずいぶん複雑な表情になっていたのだろう。
それまでは淡々と話していた叔父は、つい、耐えきれずといったようにふきだした。
目の前でふきだされて、さすがに憮然とするギルベルト。
それに叔父はちょっと待て、と、手で制して、ひとしきり笑うと、笑いすぎて出た涙を拭き拭き謝ってきた。
「いやいや、すまない。
お前がそんな子どもみたいな顔をするのは、本当に子ども時代にさえみたことなかったからね。つい。
笑い事ではなかったね。
さあ、話をしよう。
もちろん私も私と同じように、“自分らしく生きること”で周りの大人に迫害されている恋人を救出したいというお前に全面的に協力する事にはやぶさかではない。
別に世界中を救いたいというほどの善人ではないが、特別な子ども達であるお前とルートが私の感性にあう方向の事で助けを求めているのだからね。
プランを語り合おうじゃないか。
お前はどういう手段でどういう方向に持って行きたいんだね?
お前のことだからヴィジョンはあるんだろう?」
膝に肘を置き、両手を組んで身を乗り出す叔父。
なんだか生き生きとしているように感じる。
「…お姫さんは未成年だ」
「うん、そうだね」
「……下手をうてば責任は俺様じゃなくて親父んとこに来るかも」
「うん。だから下手を打たないようにしないとね」
一応のそんなやりとりで叔父が全てのリスクを理解したうえで協力してくれる気でいることを悟って、ギルベルトは心の底から感謝した。
もちろん叔父に責任が行くような事は絶対に避けなければならない。
でも…大事な大事な恩人にそのリスクを負わせることになっても、お姫さんが大事なのだ。
そうやって互いに決意してからは話は早かった。
ギルベルトはまず淡々とお姫さんの側の状況を説明し、そして自分の意思を伝える。
「俺様はお姫さんが18になったら籍入れて離れで一緒に住みたいんだ。
確かにまだ学生だけど…今でもトップキープしながらバイトしてるし、普通の新卒の初任給くらいにはなってるから、最低限食費と光熱費くらいは出る。
もちろん安定した生活とは言い難いけど…お姫さんにとっては今よりは良いと思う」
「それまでは?
お前は来年18だけど、1歳年下だと言ったね?
そうしたらあと2年あるわけなんだが」
「…なるべくうちに来てもらって……」
そう、それまではお姫さんは保護者である親の管理下だ。
それはどうしようもない。
もちろん今日のようにうちに泊まってもらう事は構わないが、親がNoと言えば泊めたら犯罪になってしまう。
もちろんギルベルトはお姫さんのためならそうなっても構わないが、そうしたら誰がお姫さんを守るのかと思うと、それも出来ない。
自分の家族以外で誰がお姫さんの救出に協力してくれるのか…
そんな事を考えてグルグルしていると、そこはさすが大人と言う事か。
叔父はスマホを出してどこかへメールを送っている。
どこへ?と視線を向けると、どうやら送信をし終わったらしく、叔父はスマホを見ていた顔をあげ、ニコリと笑った。
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