ツインズ!20章_2

ギルベルト視点

お姫さんを手にする方法2


本当にずっと気が張り詰めていたのだろう。
可哀想に、ギルベルトにもたれかかったまま眠っているお姫さんの頬には涙の跡が残っている。

『ルッツ?悪い、せっかく風呂に湯を張ってもらったけど、お姫さんちょっと眠っちまったから、もったいないからお前がはいってくれるか?』
と、ルートに断りをいれたあと、ギルベルトは眠ったお姫さんを横抱きにして立ち上がった。

本当に…驚くほど軽い身体。華奢な手足。

本人が言うからには確かに男なんだろうが、こうして抱えていても信じられない。
そこらのアイドルも真っ青な可愛らしさだ。

あまりに可愛らしいので、本当は着替えさせてやった方がいいのかもしれないが、自分が服を脱がせるのはなんだか悪い気がして躊躇してしまう。
なので、仕方なしにそのままベッドに寝かせてやった。


さて、こうしてひと段落ついたわけだが、よくよく考えてみれば、世間一般ではとにかくとして、ギルベルトの環境、この家ではお姫さんが少年だったと言う事に関しては、まあ別に悲報でもなんでもないのではないだろうか。

なにしろ保護者兼同居人が、一応自分の付き合いに関してという前提ではあるが女性嫌いだ。

さらに男所帯である関係上、今は非常時であるとは言っても、男しかいない家に嫁入り前の少女を泊めると言うのは非常によろしくない。

将来的な事と考えてみても、子どもが出来ないという一点については覆しようがないが、ギルベルトの母方の家はそれなりに引き継ぐ物もある家だが、父方は普通の勤め人で、ギルベルト自身は父方の家の人間という事になっているので跡取りの問題はない。

第一異性同士結婚しても数組に一組くらいの割合で不妊で子どもができないらしいし、なまじ出来る可能性が大きいが出来ない、もしくは要らないと思って子どもがいない家庭で、周りからあれこれ言われるよりは、始めから出来ないとわかっている同性婚の方が気楽は気楽である。

そもそもが、あまり体が丈夫でないお姫さんのことだ。
もし女の子だったとしても、下手をすれば出産だって危険かもしれない。
お姫さんの子どもならいても可愛いかもしれないが、お姫さんの命と引き換えにしてでも欲しいわけではないので、つくれたとしてもつくらない可能性も大きい。

ということで、自分との関係諸々では問題がないとして……

世間の目、という事で言うなら、あかの他人なら、プライバシーに踏み込んでくるような輩はそいつの方がおかしいわけだしスルーで、叔父は当然その手の事に偏見はない。

ルートは…驚くかもしれないが、なまじ男所帯で育っているので、女性が家にいるよりは気楽だと、最終的には慣れてくれるだろう。

お姫さんが家で可愛い格好をするのには全く問題がないし、むしろ可愛い格好をしていて欲しい。
癒しは欲しい。

外では…まあ、大丈夫。
スカートを履いたらお姫さんほど可愛い女の子は滅多にいない。
絶対に男だなんて思われない。

今まで妹の洋服を借りていたらしいお姫さんと何度もデートをしたが、周りの男の羨望の眼差しを一心に集めるくらいには、お姫さんは完璧な美少女だった。

うん、そっちも問題はないな。

そう思うと、実は自分との関係においては、メリットがデメリットを超えるのではないだろうか……


一番の難関はお姫さんの父親だが、“いなければ良かった”というくらいなら、欲しいと言う人間がいるのだから素直に引き渡して欲しいところだ。

そのあたり…どうなんだろうか……


まあとりあえず、どちらにしてもこの国(※仮想です)で籍をいれるには男女共に18歳にならないといけないので、ギルベルトはあと1年、お姫さんはあと2年待たねばならない。

それより当座の問題を片づけておこう。


一応この離れはギルベルトのものとなっているが、そのギルベルトが来年成人するまでは叔父が保護者で責任者だ。

家の中で起こるイレギュラーについては報告しておくべきである。


ギルベルトがそう判断して、すでに帰宅しているらしい叔父に電話を入れて事情を話すと、叔父はギルベルトが話し終わるまで黙って聞いていたが、話し終わると、

『事情はわかった。ギル、少しきちんと話をしようか。そちらに行くからね』
と言って、通話を切った。

相変わらず淡々とした口調で、どう受け止められたのかはよくわからない。

叔父がもし反対の立場だったら?
叔父と対立した事はないので、若干の不安がよぎる。

が、やっぱりここは譲れない。

たとえ育ての親で尊敬すべき大人を相手にしても、ギルベルトは男として守らねばならないものがすでにあるのだ。

ちらりと視線を落とした先にはギルベルトを頼りきって安心しきって眠るお姫さん。
その安らかな眠りを守るためにも、自分は誰を相手にしても絶対に負けられない。

そう決意して、ギルベルトはそっと寝室を出て、叔父を迎えるべくリビングへと戻った。



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