アーサー視点
おとぎ話の終わり6
──自分的に一番問題だと思う事…
それを話したら全ては終わるんじゃないだろうか…。
そもそも今こうして父親に殴られて家を出る事になったのだってそれが原因だ。
と、何を話せば…と整理し始めたところで、アーサーはストンと我に返った。
もう絶対にダメであろうことから話せば、話す事は一つで済む。
そうだ…実は男だ…それを話して土下座して死のう。
色々思うにはアーサーはすでに疲れ過ぎていた。
本当に疲れてしまっていたのだ。
だから…悲しいけれどさっさと終わりにしたい。
「あの…」
「ああ?」
「…男…なんだ」
「はあ???」
唐突過ぎたか。
ギルはポカンと口を開けたまま固まっている。
驚いて固まっている隙にさっさと言いたい事を言ってしまおう…と、アーサーは半ばやけくそ気味に続けた。
「俺は双子で…妹のアリスが困っていたから、あの日、代わりにフランが紹介するって相手に断りに行ったんだ…」
………
………
………
「へ??!!!!」
………
………
………
「え~っと…ちょっと待ってくれな?
俺様さすがに想定外すぎて、混乱してっから…」
怒りよりも驚きの方が大きいらしい。
ギルベルトはそう言って、もうそれは習慣なのだろう。
アーサーの頭を撫でる。
「つまり…最初の日にアーサーとして会った方がアリス?」
と、最終的にそこに行きついたらしく聞いてくるのに、アーサーはうんうんと頷いた。
「了解。そこは理解した。
つまり、なんだかお姫さんよりはしっかりしてそうだったが、曲がりなりにも女の子だしな。
交際断って逆上でもされたら危ないってことで、兄貴が頑張ってみたってことだよな」
こんな衝撃的な告白をされても、ギルベルトは飽くまで理性的に分析して好意的に取ってくれて、あまつさえ、また頭を撫でてさえくれているあたりが、すごいと思う。
本人いわく混乱はしているらしいが
「たぶん…色々理解したり分析したりするのに時間かかるし、黙ってられてもお姫さんも不安だろうから、口に出しちまうけど気にしないでくれ」
と、それでもアーサーのメンタルを先に気にしてくれるのも相変わらず優しい。
「とりあえず…ここで疑問は二つ。
最初に女装してたのはなんでだ?
あと、最初の日、俺様の方もその気がなかったと分かった時点でカミングアウトしなかったのは?」
怒った様子も詰問口調でもなく、淡々と素朴な疑問として聞いてくるギル。
それはアーサーを随分と安心させたが、その質問は答えにくい。
最初の日、女装をしていた理由を正確に話すには、アリスの片思いにも言及する事になる。
「一つ目の質問は…ちょっと他の人間の大切な秘密に触れることになってしまうから…。
とりあえず俺の…個人的な趣味とでも思っていてくれて構わない。
二つ目は単純にその時にその発想がなかった。
あとで気づいたけどその時にはもうアリスとしての関係が出来あがりすぎてて…言ったら嫌われるのが目に見えてたから…」
怒られるのが嫌だった…で済ませてしまえばいいだけだが、便宜的なことだけですませず、嫌われたくなかった、一緒にいたかったのだという気持ちを伝えるのはせめてもの誠意だと思う。
Before <<< >>> Next (9月24日0時公開)
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