ツインズ!17章_2

ギルベルト視点

早く大人になれるよう2


うん、なかなか驚きのカミングアウトだった。

だって叔父はいつでも紳士で男性にも女性にも人望厚く人気者だ。
もちろん女性に対して邪険な態度を取るようなところも見た事がない。

「まじ?!」

「ほんと、ほんと。
姉さんは普通に好きだし平気だったんだけどね。
たぶん…性的対象として見てくる女性が苦手なんだろうね。
だからプライベートではずっと1人で静かに暮らしていきたいと思ってたんだけど、親戚とかが結婚結婚うるさくてねぇ…。
そんなわけでお前達を引き取ったのは、お前達にしてみれば普通に保護者のいる環境を得られて、私にしてみれば結婚しろしろうるさいお節介な連中に断る大義名分が出来て、互いにWin-Winな関係だったんだよ、実は。
もちろん、最愛の甥っこ達の成長を見守れるというメリットもあるしね。
お前達のおかげで私は不幸な諸々を避けられたし、幸せをたくさんもらう事ができたんだ。
だから、お前が私の事で負い目を感じる事は一つもないんだよ」

と、おそらくギルベルトがずっと負い目を感じ続けていた事に気づいていたのだろう。
叔父はそう言って苦笑した。

だが、それは別にそのための方便とかではなく、本当にそうらしい。

考えてみれば叔父は仕事の関係の部下や同僚の話もしばしばしてくれたが、感情的な部分でのやりとりに男性の知人達の話が出て来た事はあっても、女性の知人が出て来た事はなかった気がする。

誰それは楽しい奴で…とか、気が利いて、とか、こんなに親切で…と、名前があがっていたのは、思い返してみれば全員男性だ。

「もしかして親父は同性が好きな人間なのか?」

単純に恋愛的なものに興味がないのか、それともその対象としては女性じゃなく男性が良いのか。

それは別に単なる素朴な疑問に過ぎなかったのだが、叔父は別の意味にとったらしく、一瞬答えるのを躊躇した。


「あ~…あのな、もし恋愛に興味ねえんだったら良いんだけど、恋人が男だからとかそういう理由だったら、俺らに気にせず連れてきても良いし、籍入れても良いからな。
まあ、相手が男でも女でも、俺らの親父が惚れたってんなら、惚れるだけの事がある相手なんだろうし?
ルッツが成人するまでは法的には保護者やってて欲しいけど、俺らのために全部捨てたりとかはしねえでくれよ?」

と、ギルベルトが言うと、叔父は

「ああ、もちろんお前達にはちゃんと紹介するとも。
でも…そこまでの相手もいなくてね。
今はこうして可愛い甥っこ2人と家族で過ごす時間が一番楽しいかな」

と、少しホッとしたように笑みを浮かべた。


おそらく叔父は恋愛対象という意味では女性は論外だが、かといって男性の恋人が欲しいと思っているようでもなく、単純にそのあたりが淡泊なのだろう。

だが、母方の家は古い家なので、女性に興味がないという事自体で随分と肩身の狭い思いをしてきたようだ。

ギルベルトはすでに父方の家の人間扱いなので母方の家からあれこれ言われる事はない。

だが、恋愛対象として考えた時にはやっぱり保守的なか弱く優しく守ってやりたくなるような女性を思い浮かべるので、将来好きな相手が出来るとしても女性なのだろう。

しかしだからと言って叔父を否定する気にはならないし、男でも女でも好きになった相手と一緒になれば良いと思う。


まあ…叔父が女性を恋愛対象として見られないと言うのも、わからなくはないのだ。

ギルベルトの周りを見たって、おとぎ話に出てくるお姫様のような、純粋で儚く愛らしい少女なんて昨今どこにも見当たらない。

仕事関係は有能で現実を見据えてはいるものの、プライベートになると意外に繊細で理想主義者の叔父がよくいる世俗的でギラギラした女と一緒にいる図など想像もつかなかった。

叔父と同じようにプライベートは世俗から離れて一緒に趣味の世界に生きたいという相手が見つかって、それが同性だったとしても、納得できる気がする。

ただ自分自身に関して言えば、まだ若い事もあって、イメージ先行というか、理想に近い性格を表す性別イコール女性という夢をまだ捨てるまではいかずに、漠然といつか普通に女性と一緒になるのだろうと思っていた。

ともかく、そんなわけで、両親が他界して叔父に引き取られ、その育ての親である叔父は女性嫌いであった…という点において、ギルベルトも大概変わった家庭に育っているのである。



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