ツインズ!15章_2

ギルベルト視点

恋愛初心者の幸せな日々


──ギルちゃん、どうだった?嬢ちゃん、美人だったでしょ?

初デートの翌日、学校へ行くと当たり前にフランが寄ってくる。

普段はもう少し遅く来る男なのだが、一応紹介者として気になっていたようで、今日は話を聞こうと早めに登校してきたようだ。

(美人…か…あ~~…どっちかっつ~と美人ってより可愛いタイプだよなぁ)

と、鞄を机に置いて席に着きつつそんな事を思うが、まあ感性は人それぞれ。
それよりもアリスがフランに色々言われるのが恥ずかしくて嫌らしいので、なるべく感情的な事、感性的な事、細かい事を避けながら、

「ああ、結局色々話し合って互いにそれが一番いいんじゃねえかって結論に行きついて付き合う事にした」

と、色々を省いたら、どう聞いても恋愛関連とはとても思えない業務連絡のような報告になった気はしたが、フランは気にならないらしい。

それどころか
「あ~、ギルちゃんと嬢ちゃんのお付き合い始まりだとそんな感じになるよねぇ」
などと、1人で何か納得している。

まあ特に突っ込まれないなら、その方が良い。

「とにかく、身内に交際についてあれこれ根掘り葉掘り聞かれる事ほど気不味いことはねえからな。
俺らは俺らで節度と良識を保ちながら交際して行くから、放置しろよ?」

と、それでも念のため…と思って釘を刺すと、いつもなら食い下がるであろうフランだが今回は
「はいはい。
まあお前も嬢ちゃんも始めるまでが大変かなと思ってたけど、始まっちゃえば変に暴走するタイプでもないしね。
お兄さんだってぶち壊したくて紹介したわけじゃないし、仲良くやってくれるなら、それが一番。
静観してるけど、何かあったら相談しなさいよ?」
と、あっさりひきさがった。


ということで、フランシスからの邪魔は入らなさそうだ。

彼に変なチャチャをいれられる事に関しては、自分よりはアリスの方が嫌がっていたので、一応付き合う事を報告はしたがそんな反応だったから心配しなくても大丈夫と、Lineで報告しておいてやると、『ありがとうございます』という文字が添えられた女の子がぺこりとお辞儀をしている可愛いスタンプが返って来た。

初デートの日、帰宅してからも少しLineのやりとりをしていたのだが、アリスが送ってくるものはとにかく愛らしい。
それまでが嘘のようにタイムラインが華やかに可愛らしくなった。
それを見ているだけでなんとなく癒される。


だいたい平日はLineと電話。
そして週末は可能な限り都合をつけて会うようにしている。


そうして知れば知るほど、彼女と自分は合っているのだと言う確信のようなものが深まった気がした。

年齢の割にかなり自立していて、自分で言うのもなんだが色々他人よりも出来る事が多くて、自分1人の身の面倒を見るには多分な能力があるのもあって、他の面倒を見たり守ったりしたい自分。

もちろん誰でも良いわけではない。

明らかにただ怠惰に依存したいとか言う相手ではなく、一生懸命生きているのに何か不足していて足りないような人間で、もちろんギルベルトだってそこは聖人なわけではないので、自分の好みの容姿をしていてくれた方が良い。

アリスはまさにそんな条件にぴったりの相手だった。

怠惰なわけではない。
細やかで優しくて…でもとても自己肯定感が低くて気が弱い。
さらに付き合い始めたあとに知ったのだが、幼い頃から喘息持ちで、入退院を繰り返していたらしい。

そんな彼女を母親はとにかくとして、父親は手がかかると嫌ったらしい。

双子の兄は頭脳明晰スポーツ万能で、さらにしっかりとした性格だった事もあり、そんな兄と比べられて、ずいぶんと辛い思いもしたようだ。

だから、“出来ない”ということをあまり言いたがらない。
体調が悪くても疲れても、それを必死に押し隠して平気な振りをする。

そんな彼女が可哀想で愛おしくて、ギルベルトは出来うる限り彼女を甘やかす事にした。

だって、彼女に厳しくしすぎる人間は周り中にいるのだ。
自分くらい彼女が安心して甘える事ができる人間になっても良いはずだ。

そして、自分はそうやって手が必要な相手に手を貸し、守り、甘えさせる事を望んできたのだから、それは自分のためでもある。

幸いにして彼女の大きな丸い目は、言葉には出来ない彼女の気持ちを言葉以上に伝えて来てくれるので、そんな彼女の心情を言外から悟るのは難しい事ではない。
そうして守り、支え、慈しむうちに、臆病な子猫のような彼女も、少しずつギルベルトに慣れ、おずおずと自分からも手を伸ばしてきてくれるようになってきた。

本当に…何度も告白されても付き合う気が起きなくて断り続けていた自分が恋人を持たずにいたのも、街を連れ歩けば周りが振り返るレベルで可愛いアリスが今まで誰とも着き合った事がなかったのも、互いとこうして一緒にいるようになるために神様がそう取り計らっていたのかもしれない…そんな風に感じるほどには、彼女は自分の心の不足分を驚くほどぴったりと埋めてくれるような、完璧すぎるほどにギルベルトの好みに合致した恋人だった。



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