アーサー視点
ウサギ王子の恋人2
否定され続けた人生の中で、いつのまにやら他人が苦手になっていたアーサーだったが、ギルの側は本当に心地いい。
でも…もう一緒にいる機会はなくなってしまう。
自分はアリスに頼まれて交際を断りに来たのだし、ギルも直接断るつもりでここに来たと言っていたのだから。
そんな事を言いだせるだけの理由はアーサーにはない。
だから少し悲しい気分になったのだが、なんとギルの方から、これも縁だしまた会いたいと言ってもらえたのだ!
嬉しいっ!!…と、まず思って浮かれて、しかしすぐ、でも…と考え込んだ。
交際を断って来て欲しいと頼まれたアリスにはなんて言おう?
そもそもが、アーサーは本当は男だし、さすがに自分は女装の男だとカミングアウトする勇気はない。
“男の”アーサーが、妹から自分のふりをして交際を断って来て欲しいと頼まれた相手と交際をする大義名分……
そんな事を考え込んでいると、ギルは気を回して
「無理はしないでいい。
俺様はこれも縁だし、なんていうか…お姫さんといるとなんとなく楽しいし、一緒にいてほしいけど、お姫さんは色々怖い目にもあってるしな。
知らない男と二人が不安ってのはわかるから。
嫌なようなら、ここ出たらちゃんとフランの家の最寄り駅までは送るから、遠慮なく言ってくれ」
などと言ってくれる。
違う、違うんだ。
アーサーだってギルといると楽しいし、一緒に居たい。
でも…同性だから、“恋人として”はまずいだろう。
そして悩む…
早くしないとギルは気を使って前言を撤回してしまうかもしれない。
それは嫌だと、真剣に悩む。
悩んで悩んで悩んで……そして思いついたっ!
──お友達から!!
と言う事ではダメだろうか。
一応名目上は恋人同士という事にして、実際は普通に友人づきあいとして会う。
わざわざそうする理由としては、ここで互いにお断りをして分かれたら、またフランが余計なおせっかいをしかねないから…と言う事で。
ギルに付き合いたい相手が出来るまで、という期限を切れば、ギルにとっても悪い話ではないはずだ。
アリスもあの分では当分付き合いたい相手など出来ないだろうし、自分が関わらずに済むと思えば別に問題はないだろう。
それは素晴らしい名案に思えた。
ギルにそれを提案してみると、快諾されて、全てはめでたしめでたしだ。
こうしてアーサーはギルと“恋人という名のお友達”として交際をスタートさせる事になった。
あとで冷静になって考えてみると、この時にもう少し考えるべきだったのでは…と、色々と後悔する事になるのだが、そんな悩める日々が到来することは、この時には全く想像もしていなかったのである。
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