アーサー視点
不安1
自分…本当にトンでもない事を了承してしまったんじゃないだろうか……
待ち合わせの場所に向かう電車の中、アーサーは今更ながらそんな事を思いつつ徐々に蒼褪めていった。
現在進行形で失恋している妹は可哀想だが、これは…状況によっては自分もなかなか可哀想な事になるかもしれない……
女装はもういい。
諦めた。
でも…その格好で知らない相手に会って、アリスいわく、フランの話だとすっかりその気になっている相手に交際のお断りをいれなければいけないとか、あまりに無理ゲーだ。
というか、ばれるだろ。
いくらなんでも1対1で対峙したら、さすがにバレるだろう。
そう訴えてもアリスは聞く耳を持ってはくれない。
帰宅してすぐ、
『あたしのとっておき──いつかフランに休日デートに誘われたら着て行こうと思ってた服──を貸してあげるわね』
と、ノリノリで出してこられた袖口と首元にフェイクファーがついた可愛らしいコートに、真っ白なワンピース。
確かに可愛い。
見てると楽しい。
でも!!これを外に着ていけと言うのは無理っ!!
可愛い格好だけに、男だとバレた時に居たたまれない。
そう主張したかったわけなのだが、そこで、しょぼんと
──もう…これを着る機会なんてあたしには訪れないから……
と、普段強気な妹にうなだれられたら、もう兄としては何も言えない。
よしんばアリスの方が強くて凛々しいとしたって、アーサーはそれでも兄なのだ。
妹は可愛い。
落ち込んでいたら元気づけてやりたい。
ああ、もう仕方がない!!
「わかった。
努力はしてみるけど…バレても知らないぞ」
はぁーとため息を一つ。
可愛い…。
自分で言うのもなんだが、それでもそれらの服も、一緒に貸してもらったバッグも靴も、何もかもが可愛い。
これ、アリスと男女が逆だったらとまでも言わない。
せめて自分が女でアリスと姉妹だったとしたら、ここまで気が重くはならなかったんじゃないだろうか…。
それでもそれらを身につけた自分に泣きそうな目を向けるアリスを見ると、強く断れない。
こうして約束の次の週末、アーサーはまた決死の覚悟でそれらのアリスの本気装備を身につけて、こそこそと家を出たのである。
Before <<< >>> Next (9月3日0時公開)
0 件のコメント :
コメントを投稿