ツインズ!2章_3

アリス視点

残酷な優しさ3

テンション高く連ねるフランシスの言葉など、ほぼ入って来ない。

つまり…他の男と付き合わないかとすすめられてる?

アリスはテーブルの下でぎゅっと拳を握りしめた。
ここで泣きだすのはみじめ過ぎる。

「…急にそんなこと言われても困るわ…。
あたし、そういうの興味ないし……」

かろうじて感情を抑えてそう言っても

「お兄さんもう相手の方はOKもらっちゃったからさ、会うだけ会ってみてくれない?
もちろん、会ってみて合わないなと思ったらしかたないんだけどねっ!
会ってみないとわからないじゃない?!」

と、引いてくれる様子はない。

そんなにその男と交際させたいのか…と思えば、本当に泣きそうだ。
ダメだ…このままだと泣く。

「わかったわ。会ってみるだけね。
待ち合わせが決まったら、時間と場所をメールして」

それが限界だった。

「じゃ、あたしちょっとこのあと用があるから」
と、アリスはコーヒー代を置いて立ち上がると、急いで店を出た。




そうしてまっすぐ帰宅する気も起きなくて、なんとなくぶらつく街中…

…フランは悪くない…優しいだけ。
…彼氏の1人も作れないのだろう幼馴染にとびきりの友人を紹介してあげようと思っただけ…

容姿端麗、スポーツ万能、頭脳明晰な性格も良い1歳年上の学生。
そう、女の子が夢見る理想の彼氏像じゃないか。

おそらく付き合いたいと言う子もたくさんいるだろう。

アリスのためにそんな友人に、約束を取り付けてくれたのだ。
フランは本当に優しいのだ。

優しい…本当に優しくて、心のそこからアリスを心配してくれている。

でも…それはアリスが望んでいるのとは全く違う優しさだ。

彼氏がいないアリスを見て彼氏を作った方が良いと思っても、じゃあ自分が…とはならなのだ。

それなら要らない…とアリスは思う。
フランが手に入らないなら女の子でいても仕方ない。


…なんで…あたしは女の子に生まれて来たんだろう……

いっそのことアーサーと性別が逆だったら良かったのだ。
勉強もスポーツも努力をすれば成果が出るが、可愛さだけはどうしようもない。

自分がアーサーみたいに可愛かったら…アーサーみたいにフランに『すごく可愛い。お兄さんの好みだ』と言ってもらえたのに……

それくらいなら逆に、自分がいっそ男だったらフランをいつまでも追ったりする事もなかったのだ……
男の子だったら……

外で泣くまいと必死に堪えて早足で歩き続けた時、ふと目に入った美容院。

発作的に入ってアリスは言った。

「髪…短く切って下さい」



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