アリス視点
残酷な優しさ2
そうして注文に来たウェイトレスにカフェオレを注文したあと、改めてアリスに向き直ったフランシスは、彼にしては珍しく何かチェックでもするようにアリスをみつめてくる。
と、いつもと違うフランシスに少し焦って聞くと、フランシスは少し困ったような顔で、
「ね、もしかしてアリス、彼氏でも出来た?」
と、聞いてくるではないか。
これは…どういう意味で?
と、ドキドキしながら考える。
「何故?」
「う~ん…なんかいつもより雰囲気柔らかい気がするし?
ちょっとオシャレとかも気にするようになったみたいだから?」
褒め言葉…と取れなくはないのだが、それにしてはあまり嬉しそうではない。
というより、今までフランシスがアリスの異性関係を聞いてきたことなんてなかった気がする。
これは…これは???
いやがうえにも高まる期待。
なのに口から出て来たのは
「フランの気のせいでしょ。
あたし男の子なんて興味ないし。
そんな暇があったら勉強してるわ」
という可愛げのない言葉…。
──やってしまったっ!!
とアリスは頭を抱えて泣きたくなったが、フランシスはそんなアリスの言い方も気にならなかったらしい。
「そっかぁ~。良かった~」
と、笑顔でホ~っと息を吐きだした。
………
………
良かった…?
あたしに彼氏がいなくて良かったって言った??
え?え?えええ???春…きたーーーー?!!!
アリスでなくとも、そんな事を言われれば、そう取るのが普通だろう。
「アリス、話があるんだけど」
と、続く言葉に、アリスは緩む頬を必死に引き締めながら、
「何かしら?」
と、聞く。
恋心を自覚して十数年。
よもや実る日がくるなんて思わなかった。
女に生まれて…フランの隣の家に生まれて…恋心を捨てないで良かったっ!!
アリスはこの瞬間、心の底から神様に感謝した。
挫折だらけの彼女の人生のとんでもない大逆転だと思った。
…が、次にフランの口から出た
「実はね、アリスに紹介したい奴がいるんだ」
という言葉で、アリスの中の時間が一瞬止まって…そして輝かしい世界がガラガラと音をたてて崩れ落ちていく。
「…紹介…したい……ひと?」
聞き間違いかもしれない。
今自分が考えている事とは別の意味でかもしれない。
そんな一縷の望みに縋って聞き返したその言葉だが、大きく頷いて続けるフランの言葉は、アリスの希望を粉々に打ち砕いた。
「そうそう。なんかアリスお年頃になっても彼氏の1人も作る様子ないしさ。
せっかくの学生時代に寂しいじゃない?
アリスはお兄さんの妹みたいなものだから、愛ある素晴らしい日々を過ごして欲しくてさ。
ちょうどお兄さんのクラスメートにね、良い奴いるんだよ。ホントおススメっ!
でね、紹介してあげたくてっ!
容姿はお兄さんとはタイプは違うけど、お兄さんと張るくらいに整ってて、スポーツ万能。
鍛えてるからすごくスタイルも良くて、なんと2年間ずっと学年トップをキープし続けてる秀才!
頭の良いアリスとは話も合うと思うよ?
性格もちょっと硬いところはあるけど、誠実で良い奴なんだ。
ほんと、優良物件だからっ!」
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