ギルベルト視点
ギルベルト・バイルシュミットの自覚2
そうしてすぐ来た電車に飛び乗って、学校の最寄り駅についたら学校まではダッシュ。
かろうじて遅刻を免れて、教室に飛び込むと、今日は珍しく揃って遅刻せずにいる悪友達。
と、いつもは遅刻常習者の悪友の1人アントーニョが言えば、
「あ、もしかしてお兄さんが彼女紹介するとか言ったから、昨晩眠れなかったとか?
ギルちゃんDTだもんねぇ~。
ほんと今度紹介する子、すごい美人だから期待していいよ~~」
と、にやにやと言うフランシス。
それに
「ちげ~よ!!」
と、返しつつ、その言葉で例の約束を思い出す。
ああ、そう言えば女の子と会う約束しちまったんだっけ…と考えると、ふと浮かぶ今日の少女。
名前すらきかなかった…。
いや、出会いがアレだから、下ごころあるように感じて怖がらせるんじゃ…と思えばきけなかった。
でも…聞きたかったな…。
可愛かった。
まあきいたところで、男苦手そうだし、あんな事があったら余計に苦手になっただろうし、また会う機会なんて作れはしないんだろうが……
そう思うとズキズキと痛む胸。
「…ギルちゃん?」
と、急に黙りこんで俯くギルベルトの顔を左右から覗き込む悪友達。
「…どないしたん?
もしかして体調悪いん?」
と、右側からアントーニョが
「どうしたの?あのね、例の子のことなら、多少ポカしてもお兄さんお隣さんだしフォロー入れてあげるから緊張し過ぎないでも大丈夫よ?」
と、左側からフランシスが言うのもスルーで、ギルベルトは黙って教科書を取りだして机に広げた。
(これは…会ったらまず土下座だな……)
たぶん自分はあの子を好きになったんだ…と、ギルベルトは今更ながらに自覚した。
フランシスの幼馴染に関しては、すでにその気はないと意思表示をした上で、それでも会うだけでもと言われているわけだし、約束はすでに明日に迫っているので会うしかないが、好きな相手がいるのに付き合うのはあまりに不誠実なので、相手の子には正直に言って怒られようと思う。
(フォローは自分がするって、こいつたった今明言したしな…)
と、ちらりとフランを見てため息。
…ああ…これが、あの子とのデートの約束だったら、楽しかったんだけどなぁ…
その日は授業も上の空。
そんな事を考えながらため息をついているうちに一日が過ぎていった。
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