アーサー視点
アリスの願い
同じ甘いものが好きでもアリスはチョコやコーヒーなど少し苦味のある味の物が好きで、アーサーはクリームたっぷりのものが好きだ。
ということで、アリスの眼の前に置かれた大きなチョコパフェの上を飾る大量の生クリームはアリス自身が手にしたスプーンによってアーサーの口に運ばれている。
はたから見るとオシャレな名門ミッション系の制服を着たすごく綺麗な顔の美少年と、天使のように愛らしい美少女の二人組。
その二人の仲睦まじげな様子を遠目に見ている少女達からため息があがっている。
そんな周りの反応を楽しみながらアリスはふふっと笑うが、アーサーは
(どうせなら…さっきのウサギの王子様と来たかったなぁ…)
などと思ってため息を付いた。
しかしアーサーの心がここにあらずなことに気づいた妹の
「フランの話…聞きたくないの?」
の一言で、女装までしてここに来た本来の目的を思い出して、ハッとする。
「そう、それだっ!
で、あのタラシは何言ったんだっ?!」
と、改めてアリスに向き合うが、アリスは
「フランの悪口言わないでっ!」
と頬をふくらませる。
それに対しては可愛い妹を悲しませる相手なわけだし、アーサーも訂正する気はおきなくて、スルー。
「で?結局何言われたって?」
と聞くと、アリスもそれに関してはアーサーも自分も譲れないことは理解しているので同じくスルーすることにしたらしい。
「実はね…」
と、話を始めた。
結果……
「別の男を勧めるって最低な奴だな」
と、ぷくりとお冠のアーサーに、
「あたしフランに好きだって言ってないもの。
仕方ないわよ。
フランは単に親切なだけ。
まあ…今回は余計なお世話なんだけど…」
と、たんたんと生クリームがなくなったあとのチョコパフェを食べながら言う、当事者アリス。
「余計なお世話すぎだっ!」
と、アーサーが憤るのも利口な彼女はわかっている。
わかっていて、あえてそういう言葉を選びながら、じゃあ…と、にこりとアーサーに聞く。
「アーサーから断ってくれる?」
だいたいは自分をかばうことはあっても頼ってくることは滅多にない可愛い妹の頼みを、兄が断るはずはない。
「任せろっ!」
と胸を張るアーサーにアリスはさらにニコニコと
「じゃ、待ち合わせの場所と時間をメールで送っておくわね」
と一気に畳み掛ける。
そこでへ?と目を丸くする兄にとどめ。
「もう相手に会うだけは会うって言っちゃったから、すっぽかすのはあたしの信用問題だから、相手に会うだけは会って、”あたしとして”断ってね」
「ええーーー!!!!」
急展開にアーサーはびっくりだ。
「ちょっと待てっ!アリスとしてって言うことはまさか……」
青くなるアーサーにアリスはとても良い笑顔で言う。
「あたしの服貸すわね」
「貸すわねって……無理っ!!
今日だっていつ女装バレるかヒヤヒヤしながらここに来たのにっ!!」
「だ~いじょうぶっ!アーサーあたしよりよほど可愛い女の子だから。
血迷った男がちかんに走るくらいだし」
ちかん…というキーワードでアーサーは助けてくれた青年をふと思い出す。
…かっこよかったなぁ……
などとさらに考えていたのがまずかった。
「あ~助かっちゃった。あたしだと当たり障りのない言い方できないし…」
と、すっかり了承したような方向で話が進んでしまっている。
そこで慌てて
「待ったっ!!無理っ!!」」
とストップをかけるが、
「アーサーは…可愛い妹に知らない男相手に怒らせて危険になるかもしれないようなことしてこいって言うの?」
と、言われると、言葉もない。
その沈黙を今度こそ了承と受け取ってアリスは
「大丈夫っ!アーサー十分可愛いし、言い方も柔らかいから普通に断って帰って来てくれればいいから。
ね?お礼にあと1品何か追加してもOKよ」
と、メニューをアーサーに差し出してきた。
ということで…アーサーは恐怖体験再びとなるのであった。
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