寮生はプリンセスがお好き7章_45

いよいよ最後の競技だ。

シャマシューク風スウェーデンリレー。

このリレーの第一走者は各寮プリンセス。
つまりアーサーが唯一自分の足を使う事になる競技でもある。


100mと言えど各寮プリンセス達はそれぞれ様々な衣装をつけているので走りにくい。
が、プリンセスらしく飽くまで優美に…ということで、いくら走りにくくてもあまりに無様な格好で走るのはNGだ。

プリンセスらしく…が当然とされるため、その基準を守っている限り加点はないが、あまりにその基準を逸脱すると減点はある。

障害物の壁登りの時にスカートを引きちぎろうとしたアルが香に止められたのはそのためだ。



「お姫さん、ドレス走りにくくて危ねえし、ゆっくりで良いからな?」

と、いったんテントに戻って、騎馬戦のために着た鎧風のサポーターを脱ぎながら労わるように言うギルベルトに、アーサーはニコリと微笑む。

「大丈夫っ!少し改良させてもらったからっ!」

裁縫は得意なんだ、と、言いつつアーサーはドレスのスカートの前の方の布を膝丈くらいになるように少したくしあげて、上の部分をウェストの大きなリボンの下に目立たぬようにつけた留め金で止める。

「おお~~!マレットドレスかっ!!
すっげえ可愛い。さすが俺様のお姫さんっ!!」

その姿に歓声をあげてアーサーをだき上げてクルクル回るギルベルト。

前は膝丈で、後方に行くほど長くなり、後ろは地面に広がるくらいのウェディングドレス。
地面についてしまう部分はどうやっても汚れそうで忍びなかったので、こっそり裏地に丈夫なビニールをつけた。

こうしてギルベルトにエスコートされてスタート地点へ。


「じゃ、俺様はお姫さんがゴールする地点で待ってるから」

そこでぎゅっとアーサーをだきしめて額に口づけを落とすと、ギルベルトは第二走者のバトン受け渡し地点へ。

他のプリンセス達も続々とスタート地点に集合し、その場は一部を除いて華やかさに溢れる空間になる。

そう…その一部…金狼寮のプリンセスはアーサーを見つけると早々に駆け寄ってきて肘まで真っ白なレースの手袋をつけたその手を取って

「アーサー、すっごく綺麗だっ!!」
と、目を輝かせた。

が、すぐ

「俺が花嫁の君を抱えて走りたかったのにっ!」
と、少し膨れる。

そこにさらに駆け寄って来たのはフェリシアーノ。

「あ~、マレットドレスか~。
走りやすいけどライン綺麗に出るし、良いね~。
俺も来年は検討しよ~」

と、こちらもおそらく改造済み。
走りやすそうなドレープが綺麗なハイウェストの膝上くらいの裾のドレスである。

「フェリのドレスも軽やかで可愛いけどな」
と、アーサーが言うと、フェリシアーノは

「俺もそう思うけどねっ。
でも来年は最上級生プリンセスだから優美さを追求したいかなぁって」
と、ふわりと微笑んだ。

さすがフェリ、プリンセスの鑑だと思う。
アーサーなんて来年どころか1イベント、1競技を乗り越えるので必死で、先々どんなプリンセスを目指そうなんて事、考えた事もなかった。

ほわぁぁ~っと感嘆しているアーサーの横ではアルが

「俺は最上級生よりも早く高1になってプリンセスやめてカイザーになりたいけどね」
と、口を尖らせる。


そんなやりとりをしているうち、競技開催が告げられて、全員がスタート地点に立った。



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