プリンセスとしての自分なんかより、カイザーとしてのギルベルトの方がよほど美麗だしカリスマとしても優秀だとアーサーは思う。
というか、もう並び立つのが申し訳ない。
カッコいいという言葉しか出てこない。
もうカッコ良すぎて泣けてきた。
そんな時、少し離れたところでやはりため息が聞こえるので視線を落とすと、斜め前方の少し離れた席で、さきほどの借り物競走でアーサーを借りに来た寮生がやはり熱い視線をギルベルトに向けていた。
そうだよな…自分だけじゃなく、誰の目から見てもギルベルトは寮長として誇らしく見惚れてしまうほどカッコいいんだよな…と、納得。
それに比べて自分は…と、またしょぼんとうなだれると、そんな落ち込んだ様子のアーサーに気付いたのだろう。
寮生、モブースは
「だ、大丈夫だと思いますっ!
確かに全寮長から真っ先に狙われて5対1になるかもですけど、うちのカイザーなら上手に離脱しつつ最低1騎は道連れにできると思いますからっ!!」
と、こぶしを握り締めて力説した。
(……え?)
その言葉にアーサーはぽかんとする。
おそらく彼は何かアーサーが落ち込んだ理由を勘違いしたのだろうが、それはそれとして、何か聞き捨てならない言葉を聞いた気がした。
──5対…1…??
目が点だ。
思考が停止する。
そして…驚きから抜け出して動き出した脳は、その言葉の意味を弾きだした。
そうだ…普通に考えればギルベルトはカッコいいだけじゃなくて、あんなにすごい寮長なのだからきっと優勝候補だ。
とすれば、まずみんなが協力してその強敵を倒そうとするのは確かに自明の理のような気がする。
それは仕方ない。
もちろん本当はかっこよく勝利をするギルベルトが見たいが、負ける事があるのも仕方ない。
でもっ!!
「ルートっ!大勢に攻撃されたりしたらギル危ないんじゃないかっ?!!」
アーサーは思わずルートを振り返った。
「これってそれでなくても騎馬から地面に落とされて勝敗が決まる競技なんだろ?!
それぞれに武器を持っている騎馬に囲まれて攻撃されたら、大怪我するんじゃないかっ?!」
もう潤むとかそんなレベルじゃなくて、本泣きでルートのジャージの胸元を掴んで訴えると、ルートは
「待てっ!大丈夫だからっ!
泣かないでくれっ、アルトっ!!」
と、それだけでうろたえた。
「…でもっ……」
「そこの貴様~~!!!
どういうつもりだっ!!!」
アーサーをだきとめながらも、パニック状態のルートはそこで彼的には諸悪の根源であるモブースを睨みつける。
「ひえっ!!すみませんっ!!!
俺、泣かせるつもりとかじゃなくて……」
「当然だっ!!!
泣かせるつもりで泣かせたりしたというなら、万死に値するっ!!」
こうしてなかなか阿鼻叫喚な銀狼寮。
そんな自寮の様子を、プリンセスがそこにいるため常に気にしているギルベルトが気づかないわけもなく…苦笑して戻って来た。
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