寮生はプリンセスがお好き7章_38

さて、こちらはそれから少し遅れた、うんていを終えて壁に向かうアル。
ここでプリンセスとしての格好があだになる。

一応大きくスリットの入ったチャイナドレスということもあり、無理をすれば足を開く事も可能だが、壁を登ろうとすると長い裾がまとわりついて上手く登れない。

それでなくとも足場が悪いので、ちらちらと足元で揺れる布地に集中できず、そうこうしているうちに、後続も追い付いてきそうで、やや焦る。

ドレスが本当に邪魔だ…。
面倒くさいっ!!

そう思えばアル的にはやる事は一つ。

いっそのこと邪魔な布地を引きちぎってしまおうとスリットのあたりに手をかけると、すでにゴールした香が悲鳴。

スト~~ップッ!!!!

あんたはプリンセスだからっ!!

ゴリプリでも、プリンセスだからっ!!

一応プリンセスがビリビリの服はマジまずい的なっ!!!
プリンセスリタイアはルールとしてNGな感じだからっ!!
それするくらいなら競技の方をリタイアの方がOK的な?!!」

「言いたい事は分かった気がするけど…でもゴリプリってなんなんだいっ?!」
「…ゴリラ的…プリンセス?」
「よぉ~し、じゃあゴリラらしくあとで君の頭を握りつぶしてあげるよっ!」

と、引きつった笑みを浮かべながら、ばきぼき指を鳴らすアル。

まあそんな揶揄はさておき、何がNGなのかはわからないが、衣装を引きちぎるのはとにかくダメらしいと言う事はアルにもわかった。

でもこのままでは衣装が足にまとわりついて登れない…

「お~っけぃ!!わかったよっ!!!
衣装破かずに登ればいいんだろっ!!!」

それでも…もう追いつけなかったとしても、リタイアは嫌だっ!
もうやけくそだっ!!

アルは意を決してグッと手に力をこめた。
そして…握力、腕力だけで、足を使わず壁を登っていく。

ええええ~~っ?!!!!

そのむちゃくちゃな方法に、全校生徒が度肝を抜かれた。

そして響く感嘆のため息。
なにはともあれ、すごい!というのは皆が認めた瞬間である。

額に汗しながら手と腕の力だけを頼りに着実に一歩一歩壁を登っていくプリンセス。
壁の頂上にたどり着いた時には、会場中から拍手喝さいが沸き起こった。

「…あのウェイトを手の力だけで支えるってのは、ガチすげえ」
と、ギルベルトですら驚きの声をあげている。

「勝利がなくなっても勝負を捨てない。
その姿勢が次に結びつく的な?」
と、すでにゴールしている香もそう言ってぴゅぅ~っと口笛を吹いた。

さすがに腕だけで登るにはそれなりの時間がかかり、その間に高校生組2人に抜かされはしたものの、その後のハードルはスカートをたくしあげながらもなんとか超えて、5位でゴール。

その後1名ゴールして、他は一部は途中でリタイア、一部は時間切れで競技が終了した。



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