寮生はプリンセスがお好き7章_36

こうしてデモンストレーションが終了し、実際に出場する選手が並ぶ。

並んだ………
………
………
………?!!!!

最難易度の競技と言う事で、一部銀竜寮のようにクリアを最初から諦めている寮以外は体力自慢、腕力自慢の屈強な選手達が居並んでいる。

その中に1人異質な姿が……

いや、屈強と言えば屈強な体格ではある。

……が、服装はチャイナ服。

言わずと知れた金狼寮のプリンセス、アルフレッドである。


確かに昨年まで銀狼寮の副寮長をやっていたギルベルトが優勝していたと言う事は、プリンセスが出場するというのもありと言えばありなのだろうが……


そもそもが色々と大きすぎる体格にチャイナ服という姿自体が異様な中で、さらにそれでこの競技というのは、なかなかに強烈な光景だ。

出場選手はみな、ウォーミングアップをしながらも、チラチラとその姿に眼を向けている。

その中にはルートもいるわけなのだが、普段はあまり表情を変えない彼が、まるで恐ろしいモノを見たようなぎょっとした顔をしているのを、アーサーは初めて見た気がした。


当のアルフレッドはそんな他の視線など気にすることなくルートにのみ視線を向け、ピシッと指をさして

「君にだけは負けないんだぞっ!
どちらがアーサーを守るのにふさわしいか、ハッキリさせてあげるよっ!!」
と、宣言する。

その言葉で、それまで異様な物を見る目をアルフレッドに向けていたルートは

「銀狼寮のプリンセス所有の1枚の盾として、全力で受けて立たせてもらう」
と、こちらも厳しい表情で、そう言い返した。

飛び散る火花。

……は良いとして、互いに声のトーンを抑えず宣言するその言葉は、司会のマイクを通して全校生徒の間に響き渡っていて、あまつさえ

「おお、これは面白い事になってきましたっ!
銀狼寮のプリンセスを巡って、金狼寮のプリンセスと銀狼寮のナイトの直接対決かっ?!」

などと司会に解説まで付けられて、アーサーは頭を抱えた。

頼みの綱のギルベルトはと言うと、それに対して止める様子もなく、

「ル~ッツ!これは絶対に負けんなよっ?!
銀狼寮のプリンセスの近衛隊長としての沽券にかけてなっ!!」
と、かえって煽っていたりする。

本来は各寮2人ずつ出す競技なのだが、銀狼寮はギルが特別枠で1位と同等の点数を得るということもあり、出せる選手は1人、ルートだけなので、まあ普通に負けられないわけだが…。


一方で、金狼寮の出場選手のもう一人は、寮長の香である。

それにギルは眼を丸くした。

「香、今年はお前が出んだ?」

「ん~、一応体育祭くらいは点数稼いでおかないと的な?
去年までは出ても負けんのわかってたけど、今年はこの競技でくらいワンツーかっさらっておきたいかと…。
全体では無理だけど、この競技はアレじゃん?
特別な競技な感じだし?
王大人に言い訳も立つ的な?」

「なるほどな。
お前も大変だよな」

「おう。雇われ店長的な何かな感じだし?」

「雇われ店長かよっ!」

吹きだすギルに肩をすくめる香。


やはり司会のマイクを通して聞こえるその1年寮長組のやりとりに、生温かい視線を向ける上級生達と、苦笑する金狼寮の寮生達。


そんな中、とうとう障害物競争の戦いの幕が切って落とされた。



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