寮生はプリンセスがお好き7章_34

「んじゃ、お姫さん、ちょっくら行って来るから、フェリちゃんと良い子で待っててくれな?」
「行って来る。アルトのために1位を勝ち取ってくるから見ていてくれ」

フェリシアーノの提案でなんとか丸くおさまって、ギルとルートの兄弟はそれぞれアーサーの左右の頬に口づけて、グランドの集合場所に走っていく。

それを見送ると、隣のフェリがいそいそと可愛らしいボックスを開けてアーサーに差し出した。

「俺ね、自分でお菓子焼くのも好きなんだ~。
結構美味しく出来てると思うから、食べてみて?」

と言われて、アーサーも

「ギルが用意してくれたものだけど…」
と、自分のお菓子も勧める。

「わ~い、頂きま~す!」
と、手を伸ばすフェリ。

アーサーも
「頂きます」
と手を合わせてフェリ作のビスコッティを手に取りちびちびとかじりだした。




(天使来た…)
(…楽園はあそこにあったんだな…)
(…天使しかいない)
(天使2人…)
(天使組?)

そんな銀狼寮のテントの中央に銀狼、銀竜のみならず、他寮の寮生達からも熱いまなざしが注がれる。

本来なら一番年下でその分小さいはずの中1のプリンセスのうちの1人が巨体なため、全プリンセスの中で1位2位に小柄で可愛らしいプリンセスが2人揃って菓子をかじりながらキャッキャウフフしている図は、男しかいないこの学園の中で数少ない涼やかな癒しだ。

自寮のプリンセスに対する敬愛とは別に、その愛らしい姿に学園の生徒皆が癒される。


そんな下級生プリンセスと学生達の反応を見て、

「お前も参戦する?」
と、そこでニヤニヤと笑ってそれを親指で指す銀虎寮の寮長。


その言葉にチラリと銀狼寮のテントに視線を向けた銀虎寮のクールビューティなプリンセスは

「私にあのチイパッパに加われと?」

と、きちんとクーラーバッグで保管しておいたパリパリの薄いミントチョコをかじりながら、シンプルなグラスに入った冷えたミネラルウォータをぱしゃりと寮長に向かってぶちまけた。

「つっめてえっ!
ま、この天気だからすぐ乾くし、涼しくてちょうど良いけど」

と、そんな自寮のプリンセスのツンにも慣れた様子で、怒る事もなくむしろ楽しげに笑う銀虎の寮長ユーシス。


そして…そんなカイザーとプリンセスのやりとりに、こちらも慣れた様子で

(…カイザー…いいなぁ…)
(…俺もプリンセスに水かけられてえ…)

と、訓練された銀虎寮の寮生達は羨望の眼差しを自寮の寮長に向けるのである。

つまりまあ、プリンセスにも寮ごとに色々なカラ―があるということだ。


そうこうしているうちに、障害物競争の開始の合図が告げられる。



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