クラブ対抗リレーはギルベルトが呑気に他人ごとで観戦できる数少ない競技だ。
なにしろ参加する部や同好会というのは、各寮の寮生が入り混じって所属している。
だからどの部が勝ったからどの寮が評価されると言う事もない。
むしろ寮長カイザーや副寮長プリンセスは、部に所属すると部に入っていない寮生達や、下手をするとどこかの部に所属している寮生ですらも便宜を図ってしまう可能性があることから、中立でいるために部に入る事ができない。
だから本当に完全な中立、完全な他人事だ。
(お姫さん、この両手持ちがめちゃ可愛いよな。リスみてえ)
と、隣を見下ろすと思わず笑みがこぼれ出る。
3歳年下の中学1年生…というのを別にしても自寮のプリンセスはちっちゃくて華奢で愛らしい。
そんな風に眺めているギルベルトの視線に気づいて不思議そうに見あげてくる吸い込まれそうに大きい澄んだまんまるの目は、メロンキャンディのようで、可愛らしくもどこか美味しそうだ。
「…ギル?」
と、それは癖なのだろう。
コトンと小首を傾げてくるプリンセスに、
「ああ、部対抗競技は寮長も副寮長も関与しねえから時間あるし、フルーツでも食うか?
食うならクーラーボックスから出すけど?」
と聞いてやると、ちっちゃいくせに意外に食いしん坊な姫君は、ぱあぁ~っと嬉しそうな顔になってうんうんと頷くので、ギルベルトはホルダーに自身のタンブラーを置いて、各種ベリーやチェリーの入ったタッパーを出す。
そしてきちんとアルコール消毒した指先で中身を摘まんで、あーんとその可愛らしい口に放り込んでやった。
ぱくん、ぱくんとそれを美味しそうに頬張る様子は本当にいとけなくて雛鳥のようで、胸の奥からほんわりと温かい感情がわき出てくる。
可愛い、本当に可愛い。
ただただ守ってやりたい、可愛がってやりたいというだけの綺麗な感情。
おそらく父性本能というものなのだろう。
柄にもなくそんなものを感じながら、ギルベルトは戦いの中での束の間の休息を楽しんだ。
そんな和やかな過ごし方はギルベルト達だけではない。
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