寮生はプリンセスがお好き7章_23

来たあ~~~~っ!!!!
「「何が?」」

中等部から高等部へあがるものの、高校生は寮や部屋その他は変わりない。

今まで自宅通学だった小等部の少年達と若干の外部生の少年が、今までいた高等部の先輩が卒業したあとに入ってくるだけだ。

その中等部の新入生の顔写真はいち早く入寮予定の寮の高校生の寮生に配布される。
そう、副寮長、プリンセスを選出するためである。

その日はモブースの友人の1人がモブース達の分もまとめて顔写真を受け取って来てくれることになっていたのだが、その友人が、ずらっと写真が並んだ紙を振りかざしながら興奮して叫ぶのに、モブースともう一人の友人は首をかしげた。

写真の事なら、今日に配布されるのは分かっていた事だし、そんなに驚く事でもない。

なので、明らかに興奮した友人に、2人揃ってそう聞き返したわけなのだが、写真を持った友人は、バッと紙をモブース達の眼前につきつけて叫んだ。

この上から2行目の左から3番目の子っ!!
アリアじゃねっ?!!
リアルのアリアそのものじゃねっ?!!!!

「「おおおおお~~~!!!!!!」」

5行5列に並んだ新入生の顔写真。
中には顔立ちの整った少年もいたが、その中でも一際目立った愛らしい顔。

前副寮長だった現寮長は、どちらかと言うときりりとした大人びた顔立ちの美形だったが、その少年は透き通るように真っ白な肌に夢見るように潤んだ大きなグリーンの瞳で幼げな少女のような愛らしさ。

人形のように可愛らしい顔立ちに不似合いなやや太すぎる眉を隠して、小麦色の短い髪をサラサラのロングヘアにしたら、モブース達が大好きな【エルサイア・オデッセイ】のヒロインの巫女姫アリアそのままだ。

主人公ローランがカイザーになったと思ったら、次はヒロインのアリア登場かっ!!

と、それからの彼らの盛り上がりはすごかった。

自分達はもちろんその子に票をいれる。
新入生の中で群を抜いて可愛いので、他も絶対に入れる、入れない奴は目が節穴なのだろうと思いつつも、万が一を考えて周りにさりげなく誰にいれるかを聞きまくる。

まだよく見ていないなどというやつがいたら、アリア似のその子を推しまくる。
普段は友人以外に自主的に声をかけたりはしないモブース達に寮生は驚きながらも、勧められたその子が実際に抜きんでて愛らしかったので、票を約束してくれた。

こうして中等部の入学式。
例年通りこっそりと新入生を見に行く。


(実物…写真よりもアリアだ~~!!!)

互いに互いをバンバンと興奮気味に叩くモブース達。


この日の夜に高等部生は1人1票を自分がこれぞと思った新入生に投じる。
そして翌朝には集計に入り、その日の午前中には新プリンセスが決定。

その日のランチタイムに最終的に決定したプリンセスの名が寮生に告げられ、教師にはその人選が提出されて、新入生には最終日のランチタイムに伝えられる事になっている。

そして…決定っ!!

やったあぁぁ~~!!!
と、飛び上がるモブース達。

ながらくお守りするような愛らしいプリンセスを戴いていなかった銀狼寮の同級生達も小さく可愛らしいプリンセスの選出にテンションがあがる。



中等部の新入生は入学式後3日はウェルカム寮にいて、3日目の午後に入寮してくるが、卒のない自寮の寮長ギルベルトは、発表から入寮までのプリンセスの護衛を実弟ルートにきちんと命じていたらしい。

こうして中1とは思えないようなゴツイ少年に連れられて、モブース達が待ちに待ったヒロインは、主人公たる寮長の部屋へと到着したのである。



せっかくのヒロインなのに、自分達は近くに行けなくていいのか?
普通の人間ならそう思うかもしれないが、モブースは飽くまで白モブである。

頭数としてヒロインに何かあった時の壁の一片としてそこにいる存在で、舞台の中央に立ちたいわけではない。

いや、むしろ立ちたくはない。

だって立ったらヒロインの愛らしさを落ち付いて堪能できないではないか。

ヒロインはイケメンのスパダリに愛されてこそのヒロインだ。
決してヒロインに接触したりせず、認知もされず、ひっそりと空気のように存在しながら、その様子を愛でるモブ、それこそが正しい白モブの姿でなのである。




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