寮生はプリンセスがお好き7章_20

そしてとうとう第三走者が交代地点に戻って来た。
予定通り2位。

まあ元々負けるなんて事は万が一にも考えてはいない。
寮長である自分が2年先輩とは言え、一般生徒に遅れをとるわけはないし、他の倍長いアンカーの走行距離を考えれば、10mまでの差なら余裕で逆転する自信はある。

それよりプリンセスが自分の手元に戻って来た。
それが重要だ。

自分が本当に狼で尻尾の一つでもあったなら、おそらく隠しようもなくブンブンとものすごい勢いで振っているのだろうな、という自覚はある。

…アルト…アルト…アルト…俺様のアルト!!!

もちろんプリンセスは寮生みんなのプリンセスで、寮長と言えど独占なんてできようはずもないし、実際に口に出すことなんてできやしないが、第三走者から馬車を引き継いで走りだすと、もうテンションがあがって、とにかく馬車に向かって話かけまくった。

こうして当たり前に前にいる金虎寮の馬車を抜いてトップに躍り出て、そのままゴール。


そして、そこにいる事はわかっていたが、砂避けでその姿を見る事が出来なかったギルベルトのプリンセス。

一刻も早く顔を見たくて、ゴールしてすぐに砂避けを開くと、そこにはギルベルト自身を模した狼のぬいぐるみをしっかりだきしめた真っ白なドレスのプリンセスの姿。

一瞬ムッとする。

いや…自分が握らせたわけだし?
自分を模しているから、自分の代わりみたいなモノだし?
それよりなにより、相手は無機物だし??

そう思っても、自分以外がまるで花嫁姿のプリンセスの花婿のような格好をしているのは面白くない自分がいて、そんなギルベルトが先ずした事は、花嫁の手から花婿然としているぬいぐるみを取りあげると、その蝶ネクタイを外し、それを自分の首につけ、さも冗談のように

「ほい、こいつの役目は終了。
お姫さんのダーリンが迎えにきたぜ~!」
と言うが、実は割合と本気だ。

もちろん、あと2年半ほどはプリンセスはみんなのものだから、絶対にそんな本音は言えないわけなのだが…。


その代わり、寮長である以上、寮を代表して誰よりも側でプリンセスを守ると言う大義名分はあるので、おかしな虫がつかないよう…また、その身に危険が及ぶような事がないよう、しっかりガードできる。

今はそれでいい…。


まあ…それでも勝利の功労者だし、競技が終わったばかりで気持ちも盛り上がってるし、これくらいは許されるか…

そう思って、安全バーをあげて拘束を解いたプリンセスを思い切りだきしめた。



Before <<<      >>> Next (7月18日0時公開)



0 件のコメント :

コメントを投稿