寮生はプリンセスがお好き7章_15

スタート直後、兄がアンカーで控えているため優勝候補だからだろう。
いきなりこちらへと進路を向けてくる右隣の銀虎寮の馬車を容赦なく蹴り飛ばす。

このために自分は毎日、スピードのための訓練を半ば捨てて、走り込みよりも筋力トレーニングに重点を置いて鍛えて来たのだ。

そう、走り込みの際にさえ重りを縫いつけたジャージを着て、重り入りの靴を履いて走ったくらいだ。

元々そちらの方が得意だったのもあり、かなり力がついていたのだろう。
思いがけない反撃に、銀虎寮の馬車がバランスを崩して若干遅れる。


…が、それに気を取られた隙に、今度は左隣の金竜寮が!!

なんと金竜寮はここに寮長を持ってきている。

優勝候補の銀狼が寮長をラストに持ってくると予測したうえで、飽くまでここで銀狼を潰して勝ちに行くつもりらしい。

かなり鍛えはしたものの、銀虎の馬車に蹴りをいれた直後で若干衝撃の残る足で、さらに向かってくる相手は寮長の座を勝ち取った校内屈指の高校生である。


まずい!!

引き離すにしても迎撃するにしても、足の力が足りない。

そう思ってとりあえず馬車を守るようにしっかりと手すりを握り直して衝撃の備えるが、そこに一台の別の馬車の影が!!


2台同時にかっ?!!

と、さすがのルートも青くなったが、なんとそれは特攻してくる金竜寮の馬車とこちらの馬車の間に入って来た。


えっ?!!!

と、思ったのはルートだけではなかったらしい。

勢いがつきすぎて方向転換も出来ず、その間に入った金狼寮の馬車に激突する金竜寮。


横から思い切り激突されて丈夫な側面にわずかに傷がついたにもかかわらず、バランスを崩すことなくそこに立ち続ける金狼寮の馬車。


妨害なんて卑怯な真似も、俺のヒロインを傷つけるのも許さないんだぞっ!
勝負は正々堂々スピードでするべきだろっ!!

と、中から聞こえる金狼寮のプリンセスの声と、

「どうせこの巨体を乗せてスピード勝負は無理なんで、もういいから妨害の嵐にあうだろう銀狼のフォローでもしておけばいいんじゃね?って言う寮長の指示なんで」

と、苦笑する金狼寮の馬役の寮生。


「すまん!助かるっ!!」

本来は敵であるはずの隣寮からのエールを素直に受け取る事にして、ルートは相手に頭を下げると、ゴールへ向けて走り出した。



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