まずは金狼から。
「あ~…俺も別に誓いとかしたくない感じだし?
プリンセス本人も要らない感じだけど、ルールってことで、それっぽいことやらないとだから?
というわけで…
うちはメンタリティは追及しても仕方ないっつ~事を公言してるんだけど、寮としてどうであれ、在校中の各成績は当たり前だけど個人としては残るわけで~
自分が将来“Money”稼げるようになりたかったら、個人としてはガチ!色々勝って成績残した方が良い的な?
だから“Money”はマジ大事だし、俺はやるっ!
以上っ!!」
アーサーも唖然とした。
ギルベルトがここまでぽかん…と呆けた顔も初めて見た。
ぶっはぁ~~!!!!
と、最初に金虎寮の寮長、カインが吹きだした。
それを皮切りに3年を中心に沸き起こる笑い声。
「言ったっ!!今年の1年すげえっ!!
本音言いやがったよ、香っ!!!」
「勇者だなっ!」
「色々吹っ切れてんなっ!今年の金狼っ!!」
「インパクトからいったらぶっちぎり優勝だわっ!!」
堂々と楽しむ3年生。
2年生は反応に困っていて、金狼組は、あ~あ、これだからうちの寮長副寮長コンビは…と呆れた顔で苦笑する。
そしてそんな香に当のアルは驚いた様子もショックを受けた様子も全くなく、むしろまさかの──そうだよねっ──の同意。
「というわけで、みんな聞いて欲しいんだぞ~!!」
と、ざわめく周りに向けてパンパンと手を叩きながら叫んだ。
寮長のあの誓いと言えない誓いにプリンセスの方はなんと返すのだろうか…。
みんな興味津々でアルに注目した。
そしてアルの第一声
「俺はヒーローだからねっ☆」
今日の天気のように一片の曇りもない笑顔。
きらりん☆と白い歯が光る。
「香が言った通り、俺に勝利を誓う必要なんてないんだぞっ!
俺は強いし、欲しい勝利なら自分で勝ち取れるからねっ!
寮なんてくくりじゃなく、君達は自由に君達の守りたいものを守って、勝ち取りたいものを勝ち取ればいい。
俺が金狼寮の皆に望むのは、フェアプレイと守ってあげないといけない相手は守ってあげる事っ!
俺もそうするからっ!
その上で俺達が勝負にも勝ったなら素晴らしいし、負けてもそれはそれでいいじゃないかっ!
正々堂々、自分の正義と自由を自分自身に誓おうっ!!」
一見ふざけたような似合わぬ女装に寮長の誓いとも言えないような誓いの中で、プリンセスとしてはどうかとは思うが、寮の象徴としては素晴らしい演説だ、と、アーサーは感心した。
そう思ったのはアーサーだけじゃなかったらしい。
それまで面白がって笑っていた3年生達からも、おお~と感嘆の声があがる。
パチパチと拍手をする2年生。
雄たけびで応える金狼寮生達。
にやにやと笑う香。
さきほどの誓いは別に不仲だからではない。
互いに互いを理解し信頼しているからこそだったのか、と、アーサーは納得した。
しかしそんな感動的な空気の中、最後の最後でアルが少し眉尻をさげて付け足した
「でも…一つだけ。
ラストのスウェーデンリレーだけは皆頑張って欲しいんだぞ。
あれ、毎年やるらしいから、今年ビリだと来年も香に痩せろ痩せろ追っかけまわされるから」
で、色々が台無しだ。
本人は大まじめらしいが、周りは大爆笑。
そんな中で金狼寮の宣誓が終わった。
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