寮生はプリンセスがお好き7章_7

一番入口近くの1年のテントからグランドを囲むように奥に向かうと、2年の金竜、3年の金虎とテントが並ぶが、それもそれぞれ趣向を凝らした、テントと言うよりは何かアミューズメントパークの建物のように立派なものだ。

銀側も同じく入口から奥に向かって1年狼、2年竜、3年虎と並んでいる。

フェリシアーノのいる2年の銀竜はパルテノン神殿を模した物のようで、白い柱が立ち並び、屋根も白。
寮生の観覧席は金狼のものとは違って半円になっていて、その中央にどうやら女神アテナを模した衣装らしいもの身にまとったフェリシアーノと寮長のルークが並んで座っていた。

ギリシア神話によく出てくるような衣装はとにかく、勇ましい雰囲気の兜や盾、槍などはふわふわとした雰囲気のフェリシアーノらしくないな…と思っていると、アーサーの視線に気づいたギルベルトが

「ああ、昨日言ったけど、衣装は学校側が用意しているものを勝った寮長から選べるから、負ければ当然自寮のプリンセスに似合うモノを取れなかったりもするから」

と教えてくれる。



なるほど。
もちろん一般生徒からすれば色々が優れているのだろうが、銀竜寮の寮長は他の寮長達と比べると、あまり色々出来る方ではないように思われるので、そういう事なのだろう。

そう言う意味では一番に勝って衣装を選んできてくれるギルベルトの寮で自分は幸せだとしみじみ思った。

まあ…ギルベルトの方は、どうせ選ぶならフェリシアーノのように愛らしいプリンセスの方が良かったかもしれないが……

そんな事を思って少しうつむくと、そんなアーサーの沈んだ気持ちにも当たり前に気付いたのだろう。

ギルベルトは
「俺様、今回ほど自分が色々出来る男で良かったと思った事はなかったぜ~!
おかげで世界で一番可愛い花嫁をゲットできたし?
そんなプリンセスを連れて来れて、寮生に対しての面目も十分すぎるほどたったしなっ!」

と、撫でようにもアーサーをだきかかえて両手がふさがっているので、ちゅっとベール越しに額のあたりに口づけを落とした。


こうしてギルベルトに連れられて行った自寮のテントは銀色に輝く荘厳な城のような建物。

壁は二重構造になっていて、内部の壁は基本的には黒く、しかし四方にどうやらセロファンか何かで作成したのだろうか…色とりどりのステンドグラスが埋め込まれていて、それを外を覆う分厚い生地と内部の生地の間に設置されているらしいライトがキラキラと照らしている。



もうこれ、テントとは言わないんじゃないだろうか…

と、他の寮のテントの外観を見て思った事を、自寮のテントに足を踏み入れたアーサーは改めて再度強く思った。

寮生用には左右に木目調のベンチが2列。

2列目は1列目より少し段差があって、後ろの人間の視界が遮られないようになっていて、中央2列目には寮長とプリンセスの座席。

1列目は中央に寮長達が自席にあがるための階段。
そして、その階段の左右に2つの座席。
それは普段アーサーの護衛を買ってくれているルートと、ギルベルトがよく連絡に使っている同級生の1人の席だ。

銀狼寮の寮生達はすでに座席についていたが、ギルベルトの姿が見えると全員起立してカイザーとプリンセスを迎え入れる。


昨日は衣装を見たのはギルベルトとアーサーだけだったので、ふわふわと真っ白な花嫁衣装のアーサーを抱えるギルベルトの姿に、どこからともなくあがる、

──おおーーー!!!!

という歓声。



何故かそれは自寮だけではなく、自寮からちょうど入口を挟んで斜め横並びに立っている金狼寮からもあがっている。

(…すっげえ…あっちのプリンセス可愛いなぁ…!)
(…ちきしょ~!!銀狼寮のやつら羨ましすぎだろっ!!)
(…前半と後半の半分の時間で良いから交換してくれーー!!!)

感嘆の声に混じって聞こえるそんな言葉に、それは金狼のプリンセスであるアルに失礼では?とアーサーは一瞬思うわけなのだが、そんな金狼寮の寮生の言葉を気にするどころか、当の本人であるアルが誰よりも大きな声で

OMG!!なんで俺は銀狼寮の寮生じゃないんだいっ?!!
香、今日だけ俺はあっちに行っちゃだめかいっ?!!!」

と、思い切り立ち上がりかけて、隣の香に止められていた。

どうやら相変わらず自分が金狼寮のプリンセスであるということよりも、銀狼寮のプリンセスこそが自分にとって守るべきヒロインであるという認識の方がはるかに強いらしい。



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