生贄の祈りver.普英_3_8

ギルベルトもギルベルトの周りの人間も、雨だろうが雪だろうが馬で戦場を駆けまわるのが普通だったので、このくらいで体調を崩してしまうものだとは思ってもみなかった。

(…ごめんな…。こんなに弱いと思わなかったんだ。
これからはちゃんと気をつけてやるからな…)

医師に見せたあと、そのままベッドに寝かせた少年の汗で額に張り付いた髪をそっとはらってやりながら、ギルベルトはそう心の中で謝罪しつつ肩を落とした。



透き通るような真っ白な肌が熱で薄い桃色に色づいている。

普段はぴょんぴょんと跳ねた光色の髪は今は汗でペットリと濡れていて、それが雨に濡れた仔猫のように頼りなげで、少しでも庇護欲というものを持ち合わせていれば、放っておけない、手を差し伸べてだきしめて守ってやりたい、そんな気持ちを起こさせる雰囲気を漂わせていた。

もちろん、小動物が大好きなギルベルトがそれを持ち合わせていないわけもなく、ぎゅっと胸が締め付けられるような感覚と共に、強烈に保護したい気持ちが溢れ出てくる。

大事に大事に、今度こそ絶対にこんな風に無理をさせて体調を崩させたりしないように…

とりあえず少し体調が回復して移動しても問題ないくらいになったなら、この他国の人間の滞在用の西の宮ではなく、自分の部屋のある東の宮に少年の部屋を用意させて住まわせようと、ギルベルトは人を呼んでその用意を申しつけた。


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