生贄の祈りver.普英_3_7

小動物の赤ん坊を拾った時のような、愛おしさと焦燥感。

「体調悪いの気づいてやれなくてゴメンな?」
と、ぎゅうっとだきしめると、腕の中からクスン、クスンと小さく啜り泣く声がして、ギルベルトは色々な意味でいっぱいいっぱいになった。


それが例えエリザの手配だったとしても自分には拒否権があった。
それでも今この子どもを手元に置いているのは、紛れもないギルベルト自身の意志である。

それに対して、アーサー自身はどうだろう。
いきなり拒否権もなく見知らぬ国へと連れて来られることになり、道中はこちら側の手配不足で襲撃を受け、着いたら着いたで体調の悪さを言いだす事もできずにいて、随分と心細い思いもしているはずだ。

立場的にこれは自分の方が気づかってやるべき案件である。
絶対に守ってやらねば!!と、決意を新たにしているうちに医師が到着。

「なるべく早急に苦痛を取り除いてやれる方向で頼む」
と、そこはプロに任せるべきだろうと、若干心を痛めつつもしがみつく手をソッと外してベッドに寝かせて、自分は一歩後ろに下がった。


弟のルッツと同じ年頃のはずだが、数年幼く見える子ども。
そう、広い額も大きな丸い目も、若干ふくらみを残す柔らかそうな頬も、まさに子どもそのものだ。

自分が親ならまだ自分の元から手放すのを躊躇してしまいそうなその幼げな風貌で苦しげな様子をしているのを見るにつけ、憐れさが増す。


結局…ここまでの旅による過労で身体が弱っていたところに、雨に濡れたりしたのが悪かったらしい。
危うく肺炎を起こすところだったとのことだ。

もちろんまだ起こしていないからと言って油断は出来ない。
高熱をだしているし、衰弱している事には変わりない。



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