だが、ふと感じる小さな気配は、存外に近いところからだった。
まるで手負いの小動物が外敵から身を守るために気配を消そうとしているかのように少年はそこにいた。
気配に敏いギルベルトでなければ見過ごしてしまいそうなくらい一生懸命大きな木の影に小さく小さく身を縮めて。
「ちょっ!!お姫さんっ!!!何してんだっ!!!」
ギルベルトは慌てて駆け寄ると、反射的に脱いだ上着でアーサーの小さな身体を包んでだき上げた。
「誰かっ!!医者を呼べっ!!!」
慌てて室内に戻ると、ガラスの呼び鈴を割れそうな勢いで振りながら声をあげる。
その間も腕の中の小さな子どもはひゅうひゅうと気管支の炎症を起こしているような苦しげな呼吸を繰り返していた。
冷え切った体…青い顔……
ベッドに寝かせてやった方が体勢的には楽なのかもしれないが、冷え切っているので体温を少しでも分け与えてやりたい。
結果、ベッドで半身起こす形でだきしめる。
「…大丈夫。すぐ医者が来るからな?」
と、声をかけてやりながら、冷たい冬の匂いの移った小さな頭に顔をうずめると、意識はないようなので無意識なのだろう。
小さな手がぎゅっとギルベルトの服の胸元をつかむ気配がした。
可愛い…だがその力は弱々しくてひどく不安にさせられる。
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