生贄の祈りver.普英_3_5

そうだ…ないから求める。
求めるからあがく。
あがくから強くなる。

普通に1年中温暖な国なら何も考えずに済むところを、何もしなければ凍死する北国では知恵を振り絞って寒さを乗り越え冬を越す。

そうして人は強く賢くなるのだと……



そんな昔の事をふと思い出して、ギルベルトは小さく息をついた。
本当に幼い頃には確かに嫌いだった冬の寒さを少しだけ好きにしてくれた叔父はもういない。
亡くなるにはまだ随分と早いと思われる年齢で、急に得た病で逝ってしまった。

その叔父から託されたこの国を維持するため、これまで必死にあがいてきた。
それも跡取りに指名したルートがある程度の年齢になれば終わりだ。

もちろん長く王の地位にあり続けるのも可能と言えば可能だが、そうするにはルートは自分に年が近すぎる。

年子の姉弟の姉の子であったギルベルトとフリッツの甥、叔父と違い、ルートの母親である実姉とギルベルト自身は10歳差と多少の年の差があった分、その子であるルートとの年齢差も10歳差と叔父と甥にしては若干少ない。

ギルベルトが普通に老齢で退位をすると、その頃にはルートもそれを引き継ぐには辛い年になってしまうだろう。

それを別にしても、ギルベルトは自分で手足を動かしたい人間なので、神輿として担がれる事には向いていないと自ら思う。

ということで、予定としてはあと2年。
ルートが16歳になったら王位を譲って自分は補佐に徹しようと思っている。

その時にはギルベルト自身もまだ25だが、第二の人生を歩むなら互いに早い方が良い。



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