生贄の祈りver.普英_3_1

神との綱引き


「ただいま~。
で?襲撃者の報告は来てんだろ?
正体は掴めたか?」

この国でこれからやっていくなら、未来の王、自分の跡取りとして指名した最愛の甥、ルートヴィヒとは仲良くした方が良い。
何よりギルベルト自身の二大宝物なので仲良くして欲しいし、年齢も近いので気も合うのではないだろうか…そんな思いもあって、ギルベルトは国に帰る早々アーサーをルートに預け、自分は事態を把握して対応を考えるため、執務室に向かう。

そこではすでに2人乗りだったため若干遅かったギルベルトよりも先に城に戻った稲妻隊の部下達から今回の襲撃について聞いて、情報をまとめるエリザが詰めていた。

「まああんたが危惧した通り風の国よ。
数人をわざと逃して泳がして後から送ったあたしの方の部下に追わせたら風の国の王城へと入っていったから、偽装って事もないわ」

正体がつかめたにしては厳しい表情のエリザ。

「…情報早えじゃん」
ギルベルトが言うと、
「初手でしくったしね。
味方へのリカバリはある程度したとしても、このエリザさんが手配した諸々にふざけた水をさしてくれた輩にお礼はきっちりさせてもらわないと!
と、唇を噛みしめた。

あ~あ、敵さんも突いちゃいけないあたりを突いちまったな…

実は苛烈な武闘国家のトップとして近隣諸国から化け物のごとく恐れられている自分よりもよほど好戦的な幼馴染のその様子に、ギルベルトは秘かに相手に同情する。

本気で怒ったエリザなんてギルベルトだって相手にしたくない。
これがそこらの小国だったら、数日中には踏みつぶされて、王族貴族など今回の襲撃に関わった者は一族郎党大地に屍を晒す事になるのは請け合いである。

まあ…今回の相手は自国と並んで3大大国に数えられる風の国なのでそう簡単には行かないだろうが、近い将来戦いの女神の報復で鉄のフライパンが飛ぶ事は間違いないだろう。

実際目の前で素振りをしているフライパンに当たらないように距離を取りながら、ギルベルトはこそっとその横顔を窺う。



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