ヒロイン絶賛傷心中21

むしろアントーニョと記者を交互に撮影しているところもあるようで、こちらもこちらでここまでとなると引っ込みがつかなくなってきたようだ。

とうとう口を開きかけた時、いきなり乱入者が現れた。




「ちょっと、通してっ!
当事者って事になってんだから、言う権利はあるわよねっ!」

と、関係者用の楽屋の方から来たのか、スタッフに止められて大声で叫んでいるのは明らかにウェンズデイが女優N.A.と書いていた当事者であろう浅葱祈愛だ。



少し静かになりかけていた場内がまた一斉にすごい騒ぎになって、今度はそちらにカメラがザ~っと向けられる。



こうなっては無視することは難しい。

さてどうするのか…と、一応ぎりぎりまで介入を止められているギルベルトがハラハラしながらアントーニョの様子を窺っていると、同じく祈愛をジッと見て少しの間考え込んでいたアントーニョは最終的に息を吐き出して



「ええよ。通したって。
なんかあるなら俺がいるところで言われた方がええわ」

と、スタッフに祈愛を放すようにうながした。



祈愛を放すスタッフ。

自由になった祈愛はアントーニョの隣に少し離れて立って、開口一番



「まず…皆さんお騒がせしました。申し訳ありませんでしたっ!」

と頭を下げた。



その言葉にものすごいざわめきが広がる。

すわアントーニョの気を惹きたくてつれなくされた女優が嫌がらせにデマかっ?!と、大騒ぎになる中で、とうのアントーニョすら怒るより驚いた目で



「へ?ほんま嘘言うとったん?」

と思わず聞き返すと、祈愛は

「ううん。嘘は言ってない」

と答えて、また会場内がさらに阿鼻叫喚。カオス空間と化した。



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