と、いきなりキッチンのセットの引き出しをあけて包丁を取り出し、それを当たり前に自分に刃を向けてグッと押す。
「うあああああ~~!!!!!」
焚かれるフラッシュの中、質問した記者を含めた何人かの記者が慌てて飛び出してその手から包丁を取り上げた。
「あ、あなたはっ!!止めなかったらどうしたんですかっ!!」
…と、してきた質問の割には常識と良識はあったらしいその記者が青い顔で声高に言うと、アントーニョはやっぱり淡々と
「ん~刺しとったんちゃいます?
これでそれなりに話題にはなるやろし」
と、言った。
ざわめく記者団。
アントーニョはその中で少し視線を落として、さきほどまで包丁を握っていた手先を見つめて独白のように呟く。
「…守る気ぃもないのに守る言うたり、口先だけで大事にする言うたりすんの大嫌いやねん」
と、それだけ言うとまっすぐ前を向いた。
「全力で守る言うたからには、自分の何を犠牲にしてもどんだけ血ぃ流しても守るつもりです。
それせんかったら俺はもう親分やないし、今までのアントーニョ・ヘルナンデス・カリエドっちゅう役者として生きてきた全部が嘘になる気ぃするんで。
せやから…もう一度改めてお願いします。
俺の事あれこれ言うまではかまへんけど、あの子を傷つけんのはやめたって下さい」
普段明るいフリーダムキャラが一変きちんとスーツにネクタイまでした正装で真剣に頭を下げる姿に会場はざわめき、自然とちらちらと今回の事の発端、週刊ウェンズデイの編集部の記者の方に視線を向ける者も増えてくる。
Before <<< >>> Next (3月31日0時公開)
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