ヒロイン絶賛傷心中17

「時間だ……」

とちらりと腕時計を見てギルベルトが呟いた時、ちょうど多数のフラッシュを浴びせかけられ、マネージャーも社長もスタッフも誰ひとり連れず、アントーニョが一人で登場した。



普段はTシャツにエプロンで立つそのセットに、アントーニョはなんともそのセットには不似合いなスーツ姿で現れた。

そもそもがそういう場でなくとも、アントーニョがネクタイまでするのは珍しい。

いつでも気さくに明るい笑みを絶やさないアントーニョがいつになく真剣な表情で、そんな改まった格好でいるのに、ざわついていた会場も自然とシン…と静まり返った。



普段ならまな板が乗る台に手をつき、アントーニョはまず礼をした。

そこからして、普段と違う。

ギルベルトもフランシスも、思わず息をのんで次に何が起こるのかと凝視する。



「質問も反論もあとで受け付けるので、とりあえず10分、俺の話を邪魔せず聞いたって下さい」

で始まる言葉。



確かに集められた趣旨はわかっているはずなのだが、あまりに色々がイレギュラーで、言われるまでもなく、皆何が起こるのかと緊張した面持ちでアントーニョを凝視していた。



「まず…結論から。
マスコミの皆もそれが仕事やし、雑誌やったら売れへんかったら潰れてまうのは重々承知しとるから、別に俺の事面白おかしく弄ったり書いたりするんは全然かまへんけど、アーサーをそれに巻き込むのはほんまにやめたって下さい。

あの子は俺やギルちゃん、フランや、今まで俺と噂になった女優さん達とは違う。
フランがいたずらで連れてきたのを俺がどうしても今回の自分のドラマに使いたい思うて頼み込んだほんまの一般人やった子です。
俺らみたいにこういう弄られ方してもこの業界で食うて行きたいって思うて覚悟して飛び込んだんと違います。

俺がどうしてもて頼み込んで、全部フォローして全責任負うから、頼むから出たってって言うて今一緒に仕事しとって、出来れば一緒にやって行きたいけど、ドラマ終わって本人がどうしても嫌や言うたら、普通の社会に返したらなあかん子です。

フランに頼まれてドラマに出ん事前提に来たのを俺がどうしてもヒロインのイメージやから、絶対に何からも守ったるから、全力でフォロー入れるから、どんな事しても全身全霊で守るからって頼み込んで協力してもろうた子なんです。

せやから、俺はあの子に対して責任があります。

話題足りない言うなら、俺個人に関してなら出来る限り作るようにするし、俺の事やったら何書いてもろうてもかまわへんから、あの子に関してはほんまやめたって下さい」



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