某TV局のいつもの悪友キッチンのセット。
いつもと違うのはキッチンに立つのは悪友+天使+エリザの5人ではなくアントーニョただ一人で、観客席はいつもの観客ではなく、事務所から連絡が入って集められた記者団やカメラで埋めつくされている事である。
すでに報道関係者は知っているであろう例の記事。
事務所の社長から何かあった時のためのフォローにと待機させられているギルベルトとフランシスももちろん改めて説明を受けていた。
「…びっくりしたよな…。
あいつ社長がこの会見開かせてくれねえなら、自分の親父の名前使うとまで言ったなんてな。
…今回ばかりは本当に本気なんだな……」
いつもなら何の会見であろうと中心になって受け答えをするのは冷静なギルベルトだ。
間違っても感覚的で勢いはあるがポカも多いアントーニョに任せる事はないし、アントーニョもその手の事は好きではないのでしたがらない。
が、昨日の夜中、フランシスと二人で呼び出されたギルベルトに社長が告げたのだ。
明日、アントーニョだけで生放送で記者会見をするのだと。
「ねえ、昨日それ聞いたけどさ、お兄さんだけ意味わかってないんだけど?
トーニョのお父さんて有名人なわけ?」
3人悪友…と言いつつ、実はお互いお互いの家庭事情…特にアントーニョの芸能界に入る前のプライベートはほぼ知らない。
だが何故か当たり前に知っているらしいギルベルトに不思議に思って聞けば、ギルベルトはむしろ驚いたように
「知らないのか?!」
と目を見張った。
「え?そんなに驚かれる事?
いつかそんな話した?」
と聞けば、ギルベルトは今更気づいたように少し眉をあげた。
「ああ、お前の方がトーニョより入ったの後だもんな。
俺様、最初だったからさ、聞いてたんだ。
エスペランサ・ヘルナンデス・アルグエルスアリ監督の子が来るからって」
「え?ええっ??!!ちょ、待ったっ!!マジっ?!!
あのエスペランサ・ヘルナンデスの実子なのっ?!
なんでそれ言ってないのよっ!!」
フランシスが驚くのも無理はない。
エスペランサ・ヘルナンデス・アルグエルスアリはかつては傑作を世に何本も送りだしていた有名なスペインの映画監督である。
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