と、誰にともなく呟きながら、それは趣味でいまだに使っているレトロなダイヤル式の家電の受話器を取ると、アントーニョはダイヤルを回した。
「お~ら、親分やで。週刊誌見たやろ?
おん。そんでな、親分、社長に頼みがあるんやけど…。
あ?いや、そうやなくて、生放送で記者会見やりたいねん。
社長の立場もわかるけどな、これだけは譲れへん。
親分一生のお願いや。
いや、感情的になっとらへんよ?
失敗できひんのは親分も一緒やって。
聞いてもらえへんのやったら、親分にも覚悟あるんやけど…。
…脅しやないで?今まで親分そんな腹芸使うた事ないやろ?
ん?いや、どうしても社長が協力してくれへんのやったら、しゃあないから親父の名前使わせてもらうわ。
……おん…ほんまや。
それくらい親分本気やで。
………
………おおきに。脅すような事して堪忍な。
これちゃんとおさまったら、もうほんま迷惑かけるような事せえへんから。
おん。ほなな~」
電話を切ってアントーニョは小さく息を吐き出した。
これでもう引き下がれない。
全ては自分の責任で、全ては自分の肩にかかってくる。
「絶対に失敗できへんで…きばりや……」
ぎゅっと両手を固く組んで額に押し付けて、自分自身に言い聞かせた。
きっと明日の記者会見は俳優アントーニョ・ヘルナンデス・カリエドの一世一代の大舞台になるだろう。
豪胆な事で有名なアントーニョも、さすがに今夜は眠れそうにない……。
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