それくらいには動かないと、記者が突撃してくる可能性が高い。
どうするか……。
そんなことを考えながら車を走らせていると、自然と口数が少なくなっていたせいか、不安げな視線をアーサーが送っているのに気づいて、アントーニョは内心の焦りを押し隠して笑みを向ける。
「なん?何か困った事でもあったん?」
と声をかけると、アーサーはコトンと首を傾けて
「俺がじゃなくて…トーニョが何かあったのかなと思って……」
と大きな目でじ~っと見つめてきた。
人間関係とかに関しては不器用なのに、アーサーは何故かそういう部分の察しが良い。
ヘタな事を言うと気づかれそうだが、何もないというと怪しまれそうだ。
「ん~ちょっと親分もお疲れ気味やねん。
ちょお癒されたいわぁ~。家帰ったらぎゅ~っとしたって」
と、アーサーがコミュニケーションが嫌いではないのだがすごく照れる事を知っているので、敢えてそれ以上踏み込まれないようにそう切り返すと、案の定、真っ赤になって動揺して、それから小さな小さな声で
「…帰ったら…」
と言うのが妙に可愛らしくて、その場でだきしめたくなった。
(…親分は別にホモでもなんでもええねんけどなぁ……)
くしゃりと片手で頭をかいて、そんなことを思うアントーニョ。
まあ…今までどうでも良い相手と散々熱愛報道されてきた事を考えれば、アントーニョ自身はこう書かれても本気で全く構わないわけなのだが、それでアーサーが傷つくことを考えれば放置するわけにもいかない。
とにかくアーサーの耳に入って傷つけてしまう前に事態の収拾を…そう、珍しく真剣に頭を使って考え込んでいたアントーニョの努力は、本来なら安全圏であるはずのマンションにたどり着いた瞬間、水泡と化す。
「トーニョっ!これ見たっ?!!」
と、駆け出してきた一足先に帰ったマネージャーが件の雑誌を振りかざしながら出迎えた瞬間に……。
そして…
「こっの、どあほがぁぁ~~!!!!!」
と、普段は神経質なくせに変なところで無神経なマネージャーは当然、思い切りけり飛ばし、茫然としたまま雑誌の表紙を凝視するその肩に手をかけた瞬間、すくみあがったかと思うと、ぴゅ~っと室内へと逃げ込んでいったアーサーを慌てて追う事になったのである。
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