その日もドラマの撮影を終え、お疲れさん、とスタッフに挨拶をしてアーサーと二人して帰ろうとしていたアントーニョを何故かギルベルトが待っていた。
普段ならこれから楽しい天使ちゃんと二人きりのプライベートというところに悪友などスルーで帰るところなのだが、今日はなんとなくスタジオ内の視線もいつもと違う気がヒシヒシとしていたので、ギルベルトの厳しい顔からしておそらくその事なのだろう。
「わりいな、アーサーはちょっと待っててくれ」
と、同行していたエリザの方へうながすギルベルトの指示に従い、アントーニョはアーサーをエリザに託して
「なん?」
と、ギルベルトの方へと駆け寄った。
「ちょっとこっちへ」
と、少しエリザ達の方から距離を取るあたりで、アーサーに関する事かと、嫌な予感が広がる。
完全に死角に入ったあたりで、ギルベルトがバッグの中から取り出したのは週刊誌だ。
水曜発売で今日は火曜なので早出しの店で入手したらしい。
週刊ウェンズディというほぼゴシップばかりを取り上げたその雑誌の表紙を見たとたん、アントーニョは叫びだしそうになったが、ギルベルトがシッと指を唇にあてる。
「…大声出すなよ?
お前は慣れたもんだからいいだろうが、アーサーはショック受けるから」
と言うギルベルトの声に、アントーニョはギリリと歯を食いしばって叫びだしたくなる言葉を飲み込んだ。
その代わり
【ホモ系アイドルっ?!『アントーニョとアーサーはホモ』と二人をよく知る女優N.A.は語る】
とデカデカと表紙に踊る文字を焼き尽くしそうな怒りに燃えた目で睨みつける。
「…やられたわ……ていうか、祈愛がこういう方向の行動に出るとは思わんかったわ」
と怒りを押し殺した声で言うアントーニョからは殺気がびしばし飛んでいて、ギルベルトは自分に向けられているわけではないとわかっていても、背中を冷やりとした汗が伝う。
「お前な…腹立つのはわかるけど、アーサーの耳には入らないように気を使ってやれよ?」
と、そこでそれでも注意するのがギルベルトである。
それに対して、そこは同意見らしく
「わかっとるわ。あの子にこんなん聞かせられへん」
と、アントーニョは小さく息を吐き出した。
「あ~!親分の対応ミスやっ!なんとかせなっ!」
くしゃくしゃっと苛立たしげに髪をかき乱すアントーニョ。
そしてちらりとエリザ達の方に目を向けて、また少し困ったような顔でため息をつく。
「とにかく…早急に手ぇ打たなあかんな。
あの子が少しでも傷つかんようにしてやらな…ちょお1晩考えて明日には何かしらの行動起こすわ」
「ああ、俺様も考えてみる」
あまり時間を取っては何かあったかと思わせてしまう。
「とりあえずお互い良策を考えるっつ~ことで…」
と言うギルベルトとこぶしを合わせて分かれると、
「アーティ待たせて堪忍な~。
ちょおフランのアホの事で話しとったんや。
まあ…明日どつくからええわ~。行こか~」
と、アントーニョはアーサーに走り寄ると、他からおかしな情報がアーサーの耳に入らないうちにと、駐車場へと急いだ。
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