ヒロイン絶賛傷心中10

ちらりと押しつけられた厚い胸板から顔をあげ、ちらりと視線を上に送ると、アントーニョはにこりと笑みを向けてくる。

ここまでくるとどうやっても言うしかないだろう。

もし怒ったらゴメン…と、心の中で祈愛に謝罪をしながら、アーサーはこれ…と、さきほどから手にしている缶コーヒーを見せた。




「俺が泣いてたから…あのあと祈愛さんが自分のせいで怒られたならゴメンねって言ってお詫びだってくれたんだ。
でもこれ渡してすぐ帰ったからっ。
その他は何も話してないし、ほんの一瞬戻ってきただけだしっ」



「……それだけ?」

「…うん」

「ほんなら、別にええわ。
あとで親分からも礼言っとくな」

「…うん」



と、とりあえずそれは双方お咎めがなさそうなので、アーサーはホッとする。



「ほな、帰ろうか~。
今日はこれであがりやから、何か美味いもん作ったるわ」

と、機嫌良く言うアントーニョに促され、こうしてアーサーもスタジオを後にした。



事件はそれから1週間後に起こるのである。



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