「…え?」
意味がわからず目をぱちくりするアーサーの大きな目の目尻をアントーニョが指先でスッと撫でる。
「涙の痕がある…。
誰に意地悪されたん?
親分に言うなって言われたん?」
と、言葉を続けるアントーニョに、アーサーはようやく思い当って首を横に振った。
「あ~、それは違うんだ。
これは単に…さっき怒られた時に、最初の日に言われたのに注意してなくて迷惑かけたなって思ったら自分が情けなくなってきて泣けてきて……」
と言ったとたん、アントーニョが文字通りぽかんと口をあけて硬直する。
綺麗なエメラルドの瞳がまんまるく見開かれた。
そしていきなりぎゅうっとだき寄せられる。
「堪忍っ!親分が悪かったわ。
そんなつもりやなかってん。
単に心配で焦ってたさかい、余裕のない言い方になってもうたのか。
ごめんなぁ。悲しい思いさせてもうた」
と、ぎゅうっと胸元にだきしめられ、ぐりぐりと頭を撫でまわされ、アーサーはその腕の中でわたわたと動揺した。
「ほんっま、ごめんな。
可哀想にな。怖かったやんな」
と、頭上で振りそそぐ謝罪の嵐。
実はこの人…誰かを育てるのとかには向いてないかも?甘やかしすぎだ…と、さすがにアーサーも思ったが、そこは空気を読んで黙っておいた。
しかしやがて
「で?じゃあなんで他を怒るなって事なん?」
と、少し落ち着いたところで改めて聞かれて、アーサーは一瞬焦る。
いや…どちらにしろ言おうと思ってたんだが…怒らない…か?
自分が怒られる分には本当に構わないのだが……
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