あまりにガッカリしていたので、
「あとであたしからあのスタッフに頼んであげるわ。
確かあの人、独身で彼女もいなかったと思うし、子どもでもいる人間じゃないとあんな大きな物貰っても置き場に困るだけだし…」
とまで言ってくれて、本当にエリザもテレビで見ていた通り、皆のお姉さんなんだな…と、その面倒見の良さに感心しながらも、
「ありがとう…でもゲームのルールはルールだから…」
と、言って心配かけないように、と、顔をあげた瞬間、あの可愛らしい茶色のクマが目の前に現れて、アーサーは驚きに小さな悲鳴をあげた。
「ほい、これはアーティーに。
大丈夫!ちゃんと親分が当たった肉と交換してもらってきたもんやから、無理やりやないで?
あっちも若い男やし、どう考えてもこんなデッカイぬいぐるみもろうても困るしな。
交換したいって言うたら、久々に思い切り肉食えます言うて喜んどったで」
クマの後ろからひょいっと笑顔を見せるアントーニョに一瞬状況がつかめず硬直していたアーサーは、ほい、と、さらに差し出される愛しのクマをぎゅうっと思い切り抱きしめた。
ふわふわとしていて、それでいてしっかりとした抱き心地も最高のクマ。
嬉しい。
もう胸がいっぱいで、無言でクマを抱きしめていたが、しばらくして、エリザにポンと肩を叩かれる。
「アーサーのも揃ったわよ。
賞品もらっていらっしゃい」
と言われて、ようやくまだゲームが続いている事を思い出した。
正直もうこのクマさえいれば他の賞品なんか要らないのだが、せっかくなので貰いに行く。
もちろんクマはしっかりと抱きしめたままだ。
賞品はミシェル・ショーダンのチョコレートの詰め合わせだった。
クマがいなければこれはこれで嬉しい賞品ではあったのだが、そう言えばせっかく一番の大当たりを引いたアントーニョには悪いことをした…と、そこでようやくそれに気づく。
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