…あ……との声に左側、アーサーの方にちらりと目を向けてみれば、隣で大きな丸い目をキラキラさせて、大きなクマのぬいぐるみを見つめている。
正直、最初、隠しきりようもなくそれが荷物の中に見えた時には、去年あった絶対に食べきれないであろう餃子の◯将の餃子100人分にも勝るとも劣らぬしょうもない賞品を…誰があんなもん持ち帰ってどこに置くんだ…嫌がらせか?と、うら若き女優にあるまじき事を思っていたわけだが、欲しい人間がここにいたのか…と、エリザには珍しく、自分の女子力の低さを反省した。
…まあ、だからと言ってあれは断じて要らないと思うのだが……。
今どき本当の少女より少女趣味なんじゃないだろうか…と思うが、それも長いまつげに縁取られた大きなクルクルと丸いグリーンアイに真っ白な肌の童顔美少年だから、許せる…というか、萌える。
もし自分が当たったら迷わずアーサーにあげよう…というか、フランが当たってもギルが当たってもマネージャーあたりまでは脅し取ってもおっけぃな気がする。
まあ、自分がやるまでもなく、アントーニョあたりが容赦なくやるだろうが…。
そんな事を考えながら、やったビンゴは結局大学ノート100冊…。
仕方なしに字を覚えた4歳の時から一日も欠かさず日記をつけているギルベルトに日記用に押し付けた。
その代わり、フランからフェラガモのオードトワレ、インカントチャームを貰う。
そして…例のクマはスタッフの一人の元に行ったが、案の定アントーニョが自分が当てた大当たり、高級焼き肉用和牛5キロを持ってダッシュ。交換してもらっていた。
こうしてそれは当然ながらアーサーの手へ。
嬉しそうにクマを抱きしめる図があまりに可愛かったので何人かはカメラを構えるが、アントーニョからNGが出る。
もちろんアントーニョ本人は撮りまくっているわけだが、まあ大当たりとの交換だ、それくらいは仕方ないと、皆苦笑いだ。
「でも…せっかくの大当たりだったのに良かったのか?」
最近すっかり甘やかされるのにも少し慣れかけてきたアーサーも、さすがに悪い気がして、アントーニョを見上げる。
一目惚れしたのは確かだ。
1m2,30cmはあろうかという大きなクマなのだが、細部まで綺麗に作り込んであって、顔も大層可愛らしいぬいぐるみだ。
当たらないかな…無理かな…と、祈るような気持ちでいたがやっぱり無理で、3番目にビンゴを引き当てたスタッフの所にあの可愛らしい茶色の子が運ばれて行った時は、なんだか悲しくて目元が熱くなって視界があふれかけた涙で滲んだ。
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