ヒロイン絶賛修行中22

そんな彼女の横では、

「え、でも俺の方が後輩だし……」

と、恐縮して自分がやろうとするアーサーをアントーニョがとどめているので、そちらにもフォローを入れておいてやる。

ご飯は穏やかに美味しく食べたい。




「天使ちゃん、いいのよ、やらせておきなさい。
もう子どもの頃からの付き合いのあたしが言うのもなんだけど、こいつら本当に無駄に落ち着きなく世話やくのが好きだから。
むしろやらせてやって」

にこやかに言う年上のレディに逆らうようには育てられていないアーサーは恐縮しながらもそれに従う。

これで落ち着いてご飯に専念出来るとほっと一息。

そして

(エリザ、おおきに☆)

とアイコンタクトを送ってくるアントーニョにウィンクで応えた。



こうしてしばらくは実に幸せそうにアーサーの世話を焼くアントーニョを眺めながら食事に勤しむ。

目の前で何やらスマホを弄っているフランシスにギルベルトが喧々囂々と何か怒っているのはこの際見ないふりだ。



ああ…この場にローデさんがいれば少しは楽しいのに…いや、でもこんなカオスな場所にローデさんは呼べない。

とエリザは脳内で葛藤する。

アイドル事務所の新年会にしては、あまりにアイドルっぽくない。

そもそも大皿の刺し身やら天ぷらやらって、どこぞの親父グループの宴会じゃないんだから…まあ美味しいから良いけど……と、言い争っている二人に残してやる義理はないので、ギルベルトの好物のエビもフランが好きな鯛も思い切りかっさらう。



「アーティ、これも食べ。あ、ここの店はこれも美味いんやで~」

と、楽しそうなアントーニョに関しては、去年までなら世話を焼く相手はドラマの共演がてら多分食っていたんであろうどこぞの女優だったため、リア充爆発しろ!と思っていたが、今年の相手は天使ちゃん。可愛いので許す。

というか、口元についた米粒をチュッと当たり前に唇を寄せて取ってやる様子は、心のメモリにRECした。

けしからん、もっとやれ、と、思う。



こうしてアントーニョがア~ンなどと言いながら天使ちゃんの口にせっせと食べ物を運ぶ図を堪能していると、出し物が終わってビンゴの時間だ。


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