ヒロイン絶賛修行中21

こうしてたどり着く貸し切りの某和風レストラン。

2階の座敷に行くと、もうエリザ達もスタッフも揃っていた。



「トーニョと天使ちゃんはこっちね♪」

と手招きをするエリザの方へ行くと、料理の乗った丸テーブル。

悪友二人もいるそのテーブルで、アーサーはエリザとアントーニョの間に座らされる。


事務所の新年会なので、参加しているメンツはほぼスタッフだが、中には同じ事務所ではあるが一緒に仕事をしたことがないためほぼ交流はないTVで何度も見たことのあるような顔ぶれも居て、思わず見入ってしまう。



しかし

「お前ら最後だぞ。ほらグラス持て」

と、ギルベルトにグラスを握らされ、フランにアイスティを注がれたら、落ち着く間もなく乾杯だ。



まずは自己紹介。…だが、アーサーは自分でするまでもなく、悪友の順番が回ってきた時に初っ端立ち上がって

「親分やで~☆」

と始めたアントーニョに

「で、これが親分の天使ちゃん。
親分の親分による親分のためだけのヒロインやから、手ぇ出したらあかんよ~。
おかしなちょっかいかけたら、命の保証はせえへんよ~」

と明るく冗談めいた紹介されて、

「先月から悪友と一緒に仕事をさせて頂いてます、アーサーです。よろしくお願いします」

と、ぴょこんと頭を下げるだけで終わった。



その後は各タレントのマネージャーなどがかくし芸を披露させられている間に歓談だ。



「トーニョ、坊っちゃん大皿から取るとかいう習慣ないから宜しくね」

と、食事の場で修羅場は嫌だとばかり、そこは空気を読んだフランシスが、まずアーサーの分を取り分けようと皿を手に取るギルベルトの手をガシっとつかみ、エリザが

「ギル~、お腹空いたわ」

と援軍を出す。

ギルベルトの方は他意はなく、まず小さい順からというだけだったらしく、そんなエリザに

「お前なぁ…普通女がやるもんだろうよ…」

と溜息をつきながらも、エリザの分をまず取り分けてやり、フランはエリザの空いたグラスに烏龍茶を注ぐ。



しかしまあエリザに言わせれば、エリザとて別に出来ないわけでもやる気がないわけでもない。

もしここに愛しのローデさんがいれば、彼の料理を取り分ける権利を巡って男ども全員を沈めても奉仕させて頂く所存だ。

ただ、ローデさんが関わらない限りは、もともとマメな世話好き男3人に囲まれて、さらに自分までそこに参戦してグダグダになるよりは他の欲求を通させてやっても良いくらいの分別はある大人だっただけである。

ギルベルトに関してはその気持をあとでフライパンに込めて殴っておこうと決意して、エリザはギルベルトが取り分けた料理を食べつつ、フランシスが注いだ烏龍茶を飲んだ。



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