今日も二人でスタジオ入りすると、出待ちのファンに迎えられる。
今日は今年一番の寒さらしく、息も白くなっているが、人気番組というだけでなく、これまで2回は試食オンリーのゲスト扱いだったアーサーが正式に加わる初の【悪友キッチン】の公開収録なだけあって、特にファンの数が多い。
――足りるかな?
と、少し不安げな視線をアントーニョに送るが、アントーニョは
――大丈夫。足りなければ親分がなんとかしたるさかい、安心し。
と、その頭をなでた。
会話は小声で聞こえないものの、そのやりとりにファンから悲鳴が上がる。
スタッフに囲まれて中に向かう足を途中でピタリと止め、まずアーサーが口を開いた。
「皆、今日も会いに来てくれてありがとう。
寒いから風邪ひかないようにな」
との言葉に上がる悲鳴。
次にアントーニョが言う。
「今日皆が寒い中で可哀想やって、うちの天使ちゃんがカイロ仰山用意してん。
これからスタッフが皆のとこ回って配るけど、これ経費やなくてほんまの自腹やから、一人一個だけな?
約束したって?一人が仰山持ってったら、アーティが困るからな?」
そう、今日の後部座席とトランクの荷物はこのカイロの山である。
『は~い!!』
と、はしゃぎながら元気に返事をするファン達の中には、スマホを出して友達に広めている子もいるため、数はもう少し増えそうだが、
――足りひんかったら、これで買足しといてな。
と、アントーニョが一応スタッフにお金を渡して頼んでいたので、一人一個なら万が一があっても足りるだろう。
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