自分からキスするどころか応える事すら出来ずに真っ赤な顔で目を潤ませるアーサーに、アントーニョの側はむしろ自分でやっておいて毎朝色々ピンチになる。
…主に青少年的な自分の肉体の反応の部分で…。
しかし止めない。止められない。
あとで鉄の意志で欲望を抑えこむ事になろうとも、将来的な諸々を考えればこれだけは習慣づけるのだ…と、固い意志の元、毎朝の恒例行事として、これを続けるのだ。
今日は午前中は悪友キッチンの収録で、午後は新年会やで」
と、自分の理性が怪しくなってきたあたりでアントーニョはサッと身を起こすと急いで着替えてキッチンへ。
そしてアントーニョが火や包丁を使っている横で、アーサーが子どものお手伝いよろしく皿を出したりレタスを千切ったりしている。
そのうちそのうちと思いつつ、いざアーサーが包丁を握ったり火を使ったりすると怪我をするのではと、怖くてやらせることが出来ず、結局今日、初めての悪友キッチンの収録の日を迎えてしまった。
とりあえず…今回はギルベルトの弁当の回なので、ギルベルトに作らせてフランシスに手伝わせて、自分とアーサーは味見がてらトークでも良いかと思う。
とにかくアントーニョの天使ちゃんはエプロン姿も天使、もう放映するなら視聴料取ってもいいんじゃないかと思うほど可愛いので、何もしないでも許されるとアントーニョは思う。
むしろこの子に何か強いるようなら殺ろう…と、キラリと光る包丁を見ながら、アントーニョはそんな物騒な事を考えていた。
こうして二人で作った朝食を二人で食べる。
まるで新婚家庭のような空気で幸せいっぱいだ。
今日も親分の天使ちゃんは世界で一番可愛え…と、しみじみ思う。
食事が終われば二人で食器を洗って拭いて、スケジュールによってはそれから風呂。
シャワーではなく、風呂である理由はただひとつ。
一緒に入るからだ。
『日本の家はたいてい湯につかるさかい、一緒に住んでたら一緒にはいるもんやで?
漫画とか見てみ?◯びまる子ちゃんなんて、下手すればおとんとやって入っとるやろ?』
とアントーニョにしたり顔で言われれば、確かにそうだとアーサーも思う。
ギルベルトあたりがそれを聞いていたら、いやいや、あれは子どもだから…くらいは言ってくれたかもしれないが、あいにく二人きりの家でそれを指摘する人間はいない。
こうしてアーサーはなんの疑問もなく一緒に風呂に入り、アントーニョに頭や体など普通にあらってもらってたりする。
…が、昨日はわりあいと仕事が早くて風呂は昨夜入ったので、今日はこれから着替えて仕事にGO~!だ。
事務所が一棟まるまる借りきっているため、全員同じマンションに住んでいるわけだが、基本的にはアントーニョはアーサーを乗せて自分の運転する車で仕事場まで向かう。
人生だいたい70年から80年くらい。
そのうち20年弱は過ぎてしまっているわけだし、一日は24時間しかない。
そう思うと、この移動時間だって二人で過ごす大切な時間だ。
乗せて行けと言われるのが嫌なので、後部座席にはたいてい荷物を置いてしまっている。
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