「堪忍なぁ~。チョコなら親分があとで好きなだけ買うたるよ。
でも今日はもう家帰って休まんと、天使ちゃんも疲れたやろ?」
と、言われてみれば、確かにそのとおりである。
それに温かい車内の温度、そして車の揺れが加わると、急に疲れと眠さが襲ってくる。
目がしょぼしょぼして、コクン、コクンと頭が揺れ始めた。
それに小さく笑う気配。
「寝ててええで?着いたら起こしたるから。
そのうちハードなスケジュールにも慣れてもらわなあかんけど、少しずつな。
急に全部やと潰れてまうから。ゆっくり慣れて行き」
と、柔らかい声で先ほどの番組でも歌った聖歌を静かに歌われれば、もう瞼が閉じたまま開かない。
とても…綺麗で優しい声だ。
温かくて…耳に心地良い……。
思ったよりも疲労のたまっていたらしいアーサーは、ストンと簡単に眠りに落ちていった。
ああ…可愛えなぁ…と、信号待ちで停まっている間にちらりと確認して、アントーニョは笑みを浮かべる。
コトリと身体が傾いたのを直してやった瞬間、その襟元から転がり出た十字架にチュッと口付けてまた服の中に戻してやる。
自分の分身とも言えるものを身につけさせている…そんな満足感。
機嫌よく鼻歌を歌いながらアクセルを踏めば、夜の街の景色がまた流れ始めた。
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