ヒロイン絶賛売出し中19

「着陸したあとなら最悪羽田と中継でつないでって事も可能だけど、飛行機の中じゃねぇ…」

「最悪音源か?」

「まあ最初からそのつもりなら良いんだけど、今回はローデとのコラボセッションが売りの回だったから、ちょっとそれは避けたいねぇ…。
セットだってピアノ込みで考えてるでしょ?
ピアノど真ん中に置いて飾ってるだけってのはありえないでしょ?」


そんな深刻な二人をよそに、アントーニョは他に注目が行ってアーサーを独り占め状態でご機嫌だ。



「3人それぞれ順番にテノールとバス歌うんやけどな、親分がバス歌う時に一緒に主旋律歌ったらええねん。
他の二人にはハミングでもさせといたらええわ」

「…曲目は?」

「カトリック聖歌集 305番【みははマリア】、アーメンハレルヤ、あとはクリスマス前やからな、天の御使いとか定番の曲もあるで」

「…知ってる曲ばかりだし、知らない曲でも譜面あれば歌えるけど…はもったことないな…まあ主旋律なら大丈夫だと思うけど」

「あ~、ほな練習しよか。
音源借りてくるわ」

「あ、平気。
そこのピアノ使っていいなら伴奏くらいはしながら歌えるから」

「おお~!ほな、それで行こかっ」



「それだっ!!!」

と、そこでギルベルトとどんより考えこんでいたフランシスが、いきなり二人の間に割って入った。



「そうじゃんっ!坊っちゃんいたんじゃんっ!!」

いきなり両手でアーサーの両肩を掴んだフランシスをギルベルトがものすごい反射で引き剥がして後ろへ飛び退く。



ブンっ!!と、その直後にフランシスのいた位置をパイプ椅子が横切った。



「ああ"?自分なに人の天使ちゃんに手ぇ出しとるん?」

と、もういきなりマジギレなアントーニョに青くなるフランシスと頭を抱えるギルベルト。



「お前も猛獣の赤ん坊に手ぇ出すような真似すんなよ…」

と、フランシスに向かってため息交じりに言うと、ホールドアップした状態で今度はアントーニョの方へと一歩前に踏み出した。



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