「ほい、スタッフに頼んどいたから、その子一応怪我してへんか見てもらって、ついでにコートの染み抜きしてもらい」
と、そこで手が伸びてきて、グイッと後ろへ引き寄せられる。
と、後ろを振り返ると、アントーニョがスタッフを連れて立っている。
「で、アーティはこっちな。ちょお急ぐで」
と、そのままいきなり抱え上げられた。
「え?あ、あの、トーニョっ?!!」
「気持ちはわかるんやけど、ああいうの相手にしとるとキリないし、下手に俺らが関わると返って相手の子が他の子にひがまれたり、もしくはわざとやる子も出てくるさかいな、どうしても放置するんが気が引けるんやったらスタッフに任し」
すたすたと早足で歩きながらそう言うアントーニョに、アーサーは自分が失態を犯した事を知ってうなだれた。
確かにアントーニョの言うとおりだ。
こういう場にあまり慣れてなさそうな、大人しそうな子だった。
「あの子…大丈夫かな…」
言えた立場ではないのだが、自分のせいで何かあったらと…と、思わずつぶやくと、アントーニョがコツンと軽く頭に額をぶつける。
「まあまだ自分は売り出し前やから問題ないよ。
ただ、これから売り出したら、あれはNGやで?
そういう対応に慣れといてな」
と、相変わらず優しい口調で言ってくれるトップアイドルに、なんだか泣きそうになった。
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