ステンドグラスごしの柔らかな光に包まれてキラキラ光るエメラルドの瞳が綺麗だ。
…というか、もうどんなドラマよりドラマティックな気がする現実にアーサーは言葉も無い。
そして渡される花束…。
これは…プレゼントな。
白い薔薇は純潔と純粋。まだ色々な事なんも知らん天使ちゃんのイメージ。
ああ、あと『私はあなたにふさわしい』言う意味もあるな。
天使ちゃんの歳の数買うてん。
で、親分の歳、18になるように3本ほど足した紅い薔薇は親分の気持ち。
『あなたを愛します』、愛情、情熱や。
それからな…」
と、ここで言葉を切るアントーニョ。
もうこれ以上どうする気なんだ?これでもう一生分のドラマを味わってる気がするんだけど…と、アーサーは硬直したまま目を見開いてアントーニョを凝視するしか出来ない。
本気でキャパをはるかオーバーしている。
まばたきすらもう出来ない。
少し伏し目がちに笑う顔が本当にカッコいい。
男らしく骨ばった褐色の手で自分の胸元を探って何か取り出した。
あ…それ……
と、思わず呟いたアーサーに、アントーニョは小さく頷いた。
「おん。結構有名みたいやな。この十字架。
いつもつけとるから。
でも意味は知らんやろ?言うてへんから」
と、言われて、そういえば…とアーサーはうなずいた。
常につけているそれについてよくインタビューなどで聞かれていたが、うまく話を逸らしていた気がする。
「これな、結構骨董的な価値があるもんらしいで。
まあそんなんどうでもええんやけど、単にこれ見た時に一目惚れしてもうてな、亡くなった母親の遺産全部つぎ込んで買うたんや。
父親とはメンタル的な意味では親子としての関係はもう切れとる感じやから、これは親分が親である母親の子として生きた証の遺産を全部つぎ込んだ、言うなれば子としての時代の親分の象徴、親分の一部みたいなもんなんや。
やから…天使ちゃんが持っといてな」
と、アントーニョはチュッとクロスに口付けると、いきなりそれを首から外してアーサーにかける。
そして、え?何?でも?と躊躇する間も与えず、畳み掛けた。
「これから唯一ずぅっと親分の隣でアントーニョ・ヘルナンデス・カリエドっちゅう人間を見続ける事になる天使ちゃんに持ってて欲しいねん。
これからは…今まで苦しい時も悲しい時も親分の事も受け止めてくれた十字架の代わりになったって?」
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