そして廊下…クンとかすかに焦げ臭いような匂いに鼻を鳴らすと腕の中の天使がビクン!と身をすくめる。
「…?」
不思議に思って匂いのする方角、キッチンを覗きこむと、微妙に煤けている気がした。
ちらりと覗く燃えるゴミには消し炭になった食パン。
そして…レンジ周りに残る焦げ臭い匂いと黒ズミはこれではないだろうと思って覗く燃えないゴミには恐ろしい事になっている小型の鍋。
と、アントーニョが口を開きかけた瞬間
「すみませんっ!!外でられるようになったら弁償しますんでっ!!」
と、ガバっと頭を下げる…のを通り越して身体を折り曲げる天使。
「…やっぱり…お世話になってる後輩の俺がやらなきゃって思って食事作ろうとしたんですけど…卵が爆発して鍋1つダメにしちゃって…すみませんっ!」
「は?爆発っ?!!」
いや、なんとなくそんな感じの現場ではあるわけだが、電子レンジならよく聞くが、鍋で卵を爆発させられるなんて初めて知った。
すみません、すみません、と何度も頭を下げる天使。
半分泣いてしまってるその図はもう可愛すぎて胸がきゅんきゅんする。
「怪我…せえへんかった?」
片手で頭を下げ続ける天使の身体を起こし、片手で握りしめた白い手を取って、ちゅっとそれに口付けると、また真っ赤になって硬直するのが可愛すぎて禿げそうだ。
「天使ちゃんが怪我せえへんかったんなら、鍋の1つや2つ全然構へんよ」
やから、泣かんといて?と、眉間にちゅっちゅっと口付けると、天使はシャクリを上げながらコクコク頷く。
恥ずかしがり屋で人見知りの一生懸命なドジっ子って…どんだけ親分の好みのスペック盛り込んどんねん、この天使ちゃん。
とアントーニョはアーサーを抱きしめながら思う。
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